第23回

伊藤純/真 著 角川文庫
1998年 本体476円
20世紀が始まろうとしていた中国に産まれた3人の姉妹。やがて、長女は財閥へ、次女は孫文へ、三女は蒋介石へ嫁ぐことになる。まるでそれが運命であったかのように、革命という時代の波にのみこまれていく3姉妹は、後に「・・・ひとりは金を愛し、ひとりは権力を愛し、ひとりは中国を愛した・・・」と人々の語るところとなる。人生に次々と現れる岐路、岐路での、それぞれの想いは本当はどうだったのだろうと、ふと考えた1冊である。

田村志津枝著 朝日文庫
1997年 本体660円
候孝賢監督の映画が好きだとずっと言っていた私だが、この本を読んで、いかに自分が映画の「かたち」(色や音や話の「展開」の仕方)しか見ていなかったか、もっと言えば、台湾という国について無知であったか、ということに気づかされた。「かたち」にこだわるというのも一つの映画の観方だと思う一方で、ストーリーや、俳優の使う言語、口ずさむ歌、住んでいる家屋等々にこだわって、もう一度台湾映画を見直してみようという気持ちになった。

下川 裕治著 双葉社
1999年 本体1300円
「言葉は生き物である。そして、その言葉を学ぶ僕らも生きものである。」著者はこの本の中に書いている。言葉が出来れば、コミュニケーションがうまく図れるし、人々の生活、考え方を知る上でも有効な手段だと思う。この本はタイ語の教科書ではなく、言葉の向うにタイの人たちが見えてくるので、読んでいて実に楽しい。ひとつの言葉を取り上げて、その言葉をタイの人たちが実際どのようなときに使うのか、またそこから見えてくる考え方はどんなものか。著者の知っている範囲のタイの人々のことなので、全体がそうだとは言い切れない面もあるかもしれないが、何より生きているタイの人たちが目の前に見えてきそうで、読み物として十分に楽しめます。是非、タイに興味のある方はご一読ください。

石川 九楊著 新潮文庫
1996年 本体476円
書をはじめてはや30年。でも、文字自体の骨格の美しさという観点で、書の芸術を考えたことがなかったので、とても新鮮だった。このところ各種の芸術論を読むにつけ、自分のなかに確固たる芸術に対する価値観が醸成されていないのだなあと思う。いちいち影響される自分がカナシイ。

天童荒太著 幻冬舎
1999年 本体上 1800円 下 1900円
ベストセラーミステリー小説。子供時代に虐待をうけた3人を中心に、過去をフィードバックしながらストーリーが進んでゆく。上巻は作家の顔が見えない、癖の無い文章で、ずいぶん書き込んでるなあという印象が強い。下巻は話の展開が、いやにまとめに入っていて「この際この登場人物は不自然でしょ。」って感じの部分も・・・・ 犯人探しは、まあまあ臭い人が数人いて、面白かったわ。

フランス家族事情浅野素女著 岩波新書
1995年 本体602円
これは密かな話題本!日本では、離婚による一人親家族やシングル世帯などの増加は進行する一方で、これまでの家族観は大きく変化せざるを得ない状況になっている。 子を持つかどうか、パートナーと同居するかどうか、個人の選択肢は限りなく多様である。 ここに描かれているフランスの現状は、数十年後の日本が直面するものかもしれない。個人の自由を基礎として、自らの責任において家族形態を選ぶことが基本となっている社会は、とても居心地がよさそうだ。

妹尾 河童著 文春文庫
1996年 本体602円
大根を干して、糠につけた物がタクアンだと思っていたけど、一口にタクアンと言って様々な種類があるものだ。大根をスモークしたり、糠ではなく、藁でつけたり。そして、工場生産が主流になった今、大根は干さず塩で水を抜き、味付け液に浸しそして黄色に着色する。お店で売っているタクアンがまずい理由はこんなところにあるのかもしれない。著者のどんな題材につていも、幅ひろくアプローチをし、文化論にまで高める力がすごい。

井上 たかひこ著 成山堂書店
1998年 本体2000円
著者が発掘に参加した、海底宝捜しの記録。沈没船や、津波に流された街を探検し、数多くの埋没品を引き上げる様子が、生き生きとまとめられている。また、探検隊の仲間とのことや、宝が海に沈むことになった歴史的背景、それぞれの海辺の町の様子も描かれていて、読み手も海底探検に参加しているきもちになれる。ワクワクまちがい無し!!

聖なる魂デニス・バンクス 森田ゆり 共著 朝日文庫
1993年 本体631円
ミネソタ州でオジブワ・インディアンとして生まれた著者の半世紀。合衆国政府の差別的施策によって貧困や家族別離に苦しめられて育った著者。それが、日本での軍隊生活や、犯罪を犯して服役した経験からインディアンに対する差別に気づいていく。そして、インディアンの自治を求めて全国的な闘いを展開していくこととなる。問題の本質に気づいて立ち上がっていく姿は逞しく美しい。ただ、どうしても気になるのは、個人的生活で何人もの女性や子供を踏みにじってきたこと。それがなければもっと尊敬するのにな。