第24回

ウソツキクラブ短信河合隼雄・大牟田雄三 著 講談社+α文庫
1999年 本体580円
河合隼雄がこんな人とは知らなかった。ウソの心理的考察がなされているかと思いきや、この本全体がウソだらけ。信じた私がばかだった。どこまでがウソで何が真実かわからなくて混乱する。でも、中には現実として採用したいと思えるようなウソもあって、楽しめる。

青山圭秀著 三五館
1998年 本体1600円
インドに関わる本を読めば読むほど、理性を超えた不可思議さに強く引かれる一方で、生身の人間がさらけだされているその姿に恐怖と嫌悪を覚えるようになる。この本は、1996年1月に著者の身に実際に起きた(マドラス中央刑務所に収監される)事件とその前後の出来事について書かれたものだが、インドという国の底知れぬ闇と悠久の時の流れを同時に見た気がした。

同朋社
2000年 本体2000円
アジアのお化けや妖怪って、ヨーロッパやアメリカの感じとなんとなく違うと思いませんか?
妙に真実味があって、人間の周りにいつでもいるよっていう感じがします。この本を読んでいると、人間が純粋で自然が豊かなところほど、目に見えない霊的なものも、生活の一部になっているんだなと思います。アジアの豊かな自然の中で、ちょっと不思議な体験が出来たら、人生観まで変わってしまいそうな気がします。
12人の著者がアジアの国々(日本も含む)のミステリーワールドを紹介しています。学術的なものから、ちょっと笑ってしまうものまでいろいろあって、実に面白く読みました。こんなことを考えながらアジアを旅してみるにもいいと思います。

藤野 千夜著 講談社
2000年 本体1200円
このチープな感じの表紙がいいじゃないですか。内容も軽く、ゲイのカップルを中心に、数人の友人との日常を描いている。これといったストーリー展開はなく、軽快な語り口で話は進んでいく。ラストをどう持っていくのか心配だったけど、上手いラストでちょっと感動しました。なぜか読んでいて心穏やかになっていく作品。ただし東京弁(?)でかかれているので、特に大阪人などは読んだときに違和感があるかもしれません。(キショクワルーという感想も聞こえてきそう。)

フジイ セツコ著 旅行人
1999年 本体1600円
とにかく挿絵がいい。挿絵の域を越えているかも。著者が暮らしたトルコが、余すところ無く描かれている。モチロン文章のほうも、5年間のトルコでのカルチャーショック(死語か?)や生活の様子が愉快。充実した毎日だったのねえと、羨ましくなる。なによりも、外国暮らしですどーだすごいだろうという、えばった感じが全く無いのが好感度大。

杉本 朋美著 凱風社
1999年 本体1400円
ベトナムのハノイってこんなに穏やかな町なの?って今までの私の中のイメージを変えてくれた一冊。きっと、町の様子というものは書く人によって違った印象になるのだろう。この本に描かれている町には、やさしく暖かな時間が流れている。読むと心の中にもハノイの時間が流れ出すみたい。ハノイをより深く知ることができる。

山本 文緒著 角川書店
1998年 本体1800円
一気によんでしまった。恋愛にはまり込んでいく女性の心理もの。最後にちょっと驚きの展開がある。でも「恋愛中毒」という題名の意味するところがよくわからなかった。多かれ少なかれ恋愛は「異常」がつきものだし・・。と考えたら、真の「恋愛中毒」は女なしでは一日も過ごせない、恋愛相手の小説家先生なのかもと思った。
付け加えておきますと、テレビの恋愛中毒はこの本とは全然違う話になっています。

矢貫 隆著 文春文庫
2000年 本体552円
何故人は自殺を企てるのか、本当に死ぬつもりだったのか−この本は、自殺を図って死ねなかった人たちに、彼らが運び込まれた救命救急センターで取材したもの。その数20余人。人が自殺を図り刻々と「死」に向かっていくその間の心の動きというものは、自殺をするまでの心の乱れと対照的に驚くほど平静だ。著者によると、彼らの誰もが、自殺未遂の後、「生きていてよかった」という気もちを取り戻しているという。だが、6度目の自殺でとうとう本当に死んでしまった女性のことを思うとき、果たしてそうだろうかという気がしたのは私だけだろうか。

北村兼子 炎のジャーナリスト大谷 渡著 東方出版
1999年 本体2500円
明治時代に漢学者の家に生まれ十分な教育を受けて育った彼女は、自他共に認める才女であった。27才で夭折するまで国内外で華々しい活躍をしたことが、これまで知られていなかったのが不思議。女性に参政権さえなかった時代に、実に堂々と理性的に行動している。 こんな凄い人がいたとは!現代に生きている私が弱音を吐いてごめんなさいって感じ。

堀 淳一著 スリーエーネットワーク
1996年 本体2800円
本の装丁が奇麗で思わず手にとりました。初めのカラーページに掲載されている地図は私たちが通常見たり、使ったりしているものとはまったく違っています。カラフルで、地図というよりも絵画やグラフィックデザインを見ているようです。
アジアといってもイスラム圏の国、中国・インドのように古代から文明の発達していた国、その周りの国々もそれぞれ歴史のある国々です。今まで、アジアの古地図にまったく何の知識もない私には、一枚の地図の背景には、歴史・宗教・民族が深くかかわっていることは、新鮮な驚きでした。さらに、近代のアジアの地図になると、政治的な意味合いや戦争の影も色濃くあらわれています。
また、地図にまつわるエピソードも楽しく、アジアの歴史・文化を知るためには、なかなかいい本だと思います。