第25回

 

島の時間

赤瀬川原平著 平凡社
1999年  本体740円 

 九州、沖縄の島々を巡った記録。旅行記ものはいろいろあるが、著者独特の視点と表現で書かれているのでおもしろい。ちょっとした看板を興味深く取り上げているのもいい。ただ、どの旅も短期なので、表面的な観察に留まっているのが残念。この人の著書は、前半の方がおもしろくて後半が冗長になりがちだと思う。 根気が続かないのかな。

 

フェルメールの眼

赤瀬川原平 文・構成 講談社
1998年 本体2400円

最近のフェルメール「ブーム」にすっかり「踊って」しまった。門外不出、とか、生涯に僅かな数の絵しか残さなかった、とかあまりに繰り返し言われるものだから・・。本当は、そんなに好きなタイプの絵ではないのに、この本を買ってしまった。そして、この本を読んで、観て、今度は赤瀬川原平氏にすっかり「踊らされて」しまった。フェルメールはすごい!

 

旅客機雑学のススメ 

谷川一巳 著 山海堂
2000年 本体1500円 

私が海外に出るとき必ず乗る航空機。航空会社・運賃・飛行ルートを考えて航空券を手に入れ、後は乗るだけ。でも、次回乗るときはこの本のおかげで、もっと、いろんな事をチェックしたり、観察したり、経験したりできて、飛行時間も短く感じそうです。座席の配置が航空会社によって違うのはなぜか、飛び立つときの飛行角度で飛行時間の長短がわかるなどの知識から航空行政まで幅広い内容で、一度読んで乗ってみたら今まで漠然と見聞きしていたことにも、それぞれに意味があることに気づくでしょう。

 

拝み屋さん-霊能祈祷師の世界

藤田庄市 著 弘文堂
1990年 本体2232円 

どのようにして、「拝み屋さん」は霊能力を得、人々の悩みにどのように応えるのか。また、人はどんな時に「拝み屋さん」に頼るのか。 外からではわからない「拝み屋さん」の日々が記されていてなかなか興味深かった。この本を読んでいると、本当に「霊能力」というのはあるかもしれない、と思わせる不思議な事例が数多くでてくる。にもかかわらず、著者はあとがきで、「霊能祈祷師にはひどく共感するが、その宗教的世界間には賛同できない」と書いている。なぜか。宗教は結局、先祖の祟りなど「脅迫」がつきものだから・・。私は好感をもって本書を読んだ。

 

こぐれひでこのべトナム332048歩

こぐれひでこ著 立風書房
1999年 本体1500円

この人の旅行記は色彩豊か。建物の様子、風景の感じすべてが映像になってあたまに入ってくる。そんな感じだから、食べ物の表現なんか、さりげないのに空腹の時に読んでしまったら、たまらーんよ。きどりの無いこだわり、観察力、そして食いしん坊かもしれない彼女の本は、ガイドブックなんかより役立つよ

 

 

星野道夫の仕事(全4巻)

朝日新聞社
1998〜1999年 各4800円

星野氏の写真を編集して作品集にしたもの。野生動物や、デナリの風景、ツンドラの大地、どの写真もアラスカの空気の匂いがしてくる。風の音も聞こえてくるような雰囲気。個人的には、4巻がいい。表紙の写真を見たとき、私の中のアラスカ像にぴたっときた。シダがカーテンのように垂れ下がった森の樹。なぜかこれが私の中のアラスカなんだなぁ。

 

夏の災厄

篠田節子 著 文春文庫 
1998年 本体676円

590ページの長編にもなると、途中は面白くてもラストに近づくと散漫になることが多いが、この作品は最後まで張りつめている。もしも、日本でこの本のように伝染病がはやることがあったとしたら、行政や住民はまさにこのような反応をするだろうという、予言をつづっているようだ。さすがに公務員出身の著者ならではの作品。SFでありながら全然うそっぽくないのは、念入りな調査と構成のうまさでしょう。

 

翻訳者の仕事部屋

深町眞理子著 飛鳥新社
1999年 本体1700円

「私のような”出たがらな屋”にとって、表面には出ずに、ひとの気づかぬところでひっそりとくふうを凝らし、それがおのずから、ひそかなる自己表現ともなっているという翻訳者の仕事、これはまさしく天職とも言えるでしょう。」このあとがきの一文で、買ってしまった本。翻訳者になるには、本を読むこと、文章を書くことが好きでなければ、というのが著者の持論。「訳者」は作者の書いた台本を演じる「役者」だとも。訳者(=役者)生活37年、訳書200冊以上−そこから出来上がった著者の「翻訳作法」は、”出たがらな屋”で、本を読むことが好きな者に、妙な元気を与えてくれる。

 

親が自分を大切にするヒント

B・カールソン他著 田上時子訳 築地書館
1999年 本体1000円

親として子供とうまくつきあう方法が書かれているが、自分と親、あるいは自分と親密な人との関係に置き換えて読んだ。人間関係全般に応用できそう。カナダで親教育に携わっている著者が、自分を大切にすることができてこそ他人を大切にできるのだという観点で実践的な方法を示している。自分の感情を見つめなおしたうえでそれをコントロールしていくことは、難しいけど必要なんだなー。

 

僕はこんな旅をしてきた

西丸 震哉著 DHC
2000年 本体1800円 

とにかく著者の多才ぶりと大いなる探究心と行動力に脱帽というのが読後の感想です。
旅本にありがちな暗さや独善的な要素なんて微塵もなく、豊富な知識と行動力と頑固なまでの思い入れもあって、思想・国際情勢・歴史まで幅広い文章が展開されている。中にはちょっとドキッとするような発言もあって、なかなか読み応えありの一冊です。ちょっと辛口のおすすめ本です。

 

パリ二十区の素顔

浅野素女著 集英社新書
2000年 本体700円

パリ在住の著者が一区から二十区までの各区ごとに、歴史や文学、住民のインタビューなどをまじえながら、その色や匂いを伝えてくれる本。地図を思い浮かべて、かたつむりの渦を中心から外側へとたどりながら読むと、まるで徐々に色彩が変化していくように、街の表情が変わることがよく分かる。無性にパリの街を歩きたくなる本だ。

 

 

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