第28回

あいまいな日本の私

大江 健三郎 著 岩波書店
1995年 本体602円

1994年に大江氏がノーベル賞を受賞した時の記念講演「あいまいな日本の私」を中心にいくつかの講演が収録されている。大江氏の小説を読み終えることができなくて挫折した方にぜひ読んでもらいたい。彼の思想がユーモアたっぷりに表現されている。今まで数冊の著書を読んでいるが、こんなに面白い、そしてステキな方だとは思わなかった(失礼しました)。
 日本人ではじめてノーベル文学賞を受賞した川端康成の記念講演は「美しい日本の私」だった。あなたら「○○な日本の私」にどんな言葉を選びますか?

 

アンダルシアは晴天320日

〜年金夫婦のスペイン生活

佐々木爽 著 マガジンハウス
1999年 本体1400円

 スペイン、アンダルシア地方のマラガに移住した夫婦の手記。定年後は伊豆に別荘をと思っていたが、予想外の高値で海外移住を考える。温暖な地ということで、ハワイとスペインの暮らしやすさの比較が載っていておもしろい。結局スペインを選んだ著者は、過ごしやすい気候と週2回のゴルフに大満足。年金月額28万円を送金してもらい悠々自適の生活。しかし言葉もできず、また年齢的な限界もあるのか、付き合いは日本人がほとんどの様子。それでも楽しそうだからいいか。

  

ロビンソン・クルーソーを探して

高橋大介著  新潮社
1999年 本体1500円

ロビンソン・クルーソーにはモデルになった実在の人物がいた!その人物を発掘し、憧れの無人島生活に挑戦すべく著者の旅が始まった。現代に残された史実を検証してゆく様子や、体当たりの現地調査で矛盾点を指摘し、自らの推論を立てていく様に、著者の知的な、がむしゃらさが表れていて一気に読み進められる。

 

あの国いったいどんな国?

蒲田 聡子著 山と渓谷社
2000年 
本体2200円

 私が常々、漠然と考えつづけていたことがずばりこの本の著者の一文で明快に書かれていて、先ずそのことに感動した。「二次元的でしかなかった外国のイメージに凹凸をつけ、血と肉を与え、体温を加えたい」いくら海外経験が豊富でも、その経験を積極的に自分の経験、知識として取り込む姿勢がないと、ただの物見遊山でしかない。
 この本に取り上げられた国は10カ国。日本人には、知識としてはあるが余り行く機会のない国が多い。単なる旅行記ではなく、その国の社会・経済・宗教・歴史を踏まえた上で書かれていて、日本人の私たちとは全然別の価値観が同じ地球上に多種あるんだということが今更ながら実感させられる。

 

ハワイイ紀行 完全版 

池澤夏樹 著 新潮文庫
2000年 本体895円

この本は、単なる紀行にとどまらず、ハワイの自然・文化・人類学の入門書となっている。植生、火山、移民、産業、フラ(ダンス)、言語、航海術など著者の興味は幅広く、次々にその道の第1人者にインタビューしてハワイの真実を明らかにしていっている。魅力的な人が多く登場しておもしろい。「感動の旅」や「ずっこけ体験」的な紀行を読み飽きた人には、おすすめしましょう。ハワイの全体像を深く理解できるはず。

 

柳 美里著 小学館
2000年 本体1238円

久々に一気に読めた本。妻ある人の子を宿した著者と、末期癌であることが分かった元・恋人、東さんとの共同生活。きっと現実は時に凄惨ですらあっただろうが、これまで著者の本に私が感じていた「重苦しさ」がこの本にはない。人は望むと望まざるとにかかわらず、他人に支えられて生きていることが分かる。

 

マニラ極楽暮らし

小松崎 憲子著 マガジンハウス
1999年 本体1400円

 今まさに年金制度も、風前の灯といった感じになってきた昨今、私が退職する頃には年金暮らしなんて言葉も死後になっているんじゃないかと思ってしまう今日この頃です。そんなこと漠然と思いつつ手にとった1冊です。リタイアしてからこんな暮らしが出来たらいいのにと思いつつ読み進むうちに、具体的なノウハウが書かれていて、思わず自分にもできるぞという気になりました。
 フィリピン=売春・保険金殺人・麻薬というイメージが頭に浮かんできがちですが、そんなのは偏った一面で、正式に手続きを踏んで、外国にいるんだという意識をきちんともって暮らせば、充実した生活を送ることが可能な国だと思います。
 私ももう少ししたら、著者の所にホームステイしたいななんて思っています。

 

朗読者

ベルンハルト・シュリンク著 松永美穂訳 新潮社
2000年 本体1800円

15歳の少年ミヒャエルと21歳年上のハンナの「一時の」恋。やがて明らかになる彼女の過去。そして、この小説の終わり。「朗読」という言葉の裏に隠された彼女の真実はあまりにも切ない。それはともかく、この本が店頭で横積みされるのに、東京と大阪で1月位の時間差があったのが、妙に納得。

 

あの金で何が買えたか

村上 龍 著 小学館
1999年 本体1500円

 バブルの崩壊を「ソフトランディング」させるために、日本が投入したあのお金を別の目的に使ったとしたら、いったい何が買えるのか? 面白い企画のこの本を読んでいると、笑いとともに怒りがこみ上げてくる。「負債処理に公的資金1000億円が投入されました」なんてニュースでは今や全然おどろかなくなったけど、1000億円を使うためには毎日100万円使って270年もかかるんだって! オリンピックを個人で開催しても、たった2028億円! お金は有効に使おうよ。

 

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