第29回

アジアその日その日

飯沢 耕太郎編 ユネスコ・アジア文化センター協力 福音館書店
1997年 3000円

1976年以来続けられている「ユネスコ・アジア太平洋写真コンテスト」に応募された写真により構成された写真集です。写真の一枚一枚がアジアの生活の中の一瞬を鮮明に捕らえています。
 一口にアジアと言っても、政治・宗教・自然環境・民族は多様です。しかし、その中に生きている人間としての生活は、お互い共通するものがあるとこの写真集を見て実感しました。アジアの生活が一冊に凝縮されたお勧め本です。

 

フジ子・ヘミング 
魂のピアニスト

フジ子・ヘミング著
求龍堂 2000年 本体1600円

彼女の演奏会が開かれたり、CDが出されたりするようになったのは、ごく最近になってからだという。才能がありながら、不運が重なったと口で言うことはたやすいが、10代のデビューが珍しくない昨今で、彼女のこれまでの人生は決して短いものではない。でも、だからこそ、彼女のピアノには、いくつもの基準を器用にクリアしてコンクールで「勝ち」を得たピアニストにはない人間くささがあって、聴く者の人生とどこか共振するのだと思う。「間違ったっていいじゃない。機械じゃないんだから。」この言葉がいい。

 

人生を半分降りる

中島義道 著  新潮OH文庫
2000年 本体581円

 哲学が専門の大学教授が執筆された本。表紙に「好き勝手なことを言う男」と書いてあるけど本当にこんなこと言って「先生、大丈夫ですか?」と心配になってしまう。ところが先生は「人生を半分おりている」わけだからへっちゃらなんですねー。よく読むと中味は大変まじめな「哲学書」です。人生は短いのだから、煩わしい人間関係は最小にして、「まもなく死んでいく自分について考えること」に時間を費やしなさい、とやや乱暴に忠告してくれています。
 きっと私は生涯の間に何回かこの本を読み直すだろうな、という予感がする本に久々にめぐりあった。

 

インド人

ギーターンジャリス・スーザン・コラナド著 小磯 千尋/小磯 学訳 河出書房新社
2000年 2500円

 カルチャーショックと題した12冊からなるシリーズの中の一冊です。カルチャーショックという言葉を見て手にとりましたが、興味深いテーマが次々と現れ、雑学本ではなくしっかりとした内容で書かれているので読み応えもありなかなか楽しめました。所々にコラムの欄があり、写真も多く収録されていて楽しめる構成になっています。もちろんインドに興味のある人には目からうろこが落ちる思いがする個所がきっとあると思います。他の刊も是非一読してみたいと思います。

 

十五歳のCEO
ーパソコン一つで運命を切り開く 

キャメロン・ジョンソン 著  PHP研究所
2000年  1100円

パソコンを駆使し、アイデアと実行力で最高経営責任者となった15歳の少年。その少年の歩みと経営哲学をまとめたもの。心のすくような活躍は、読み出すとやめられないが、経営哲学をコンコンと説教されているような内容が、ほぼ半分を占めており「ごもっともでございます、無駄に年を重ねて申し訳ない」なんて気持ちになるのは私だけ?

 

コンセント

田口ランディ著 幻冬舎
2000年 本体1500円

 あえて似ている作家をあげるなら「村上龍」か? 読み終えて、気分はすこぶるすぐれないのに、こうして取りあげたくなる不思議な作家だ。続いて出された小説「アンテナ」もそうだが、人間の「こころ」に対する強い興味・関心が出ていて、心理学や哲学、いろんな側面からのアプローチが、必ずしも肯定的ではなく文章に見え隠れするのが面白い。

 

上岡龍太郎のマラソンは愛と勇気と練習量

上岡龍太郎・弟子吉治郎  著  ランナーズ
1999年  1300円

マラソンをやり直しのきく人生にたとえて、スリリングでこの上なく面白いスポーツであるという著者。著者自身の体験をもとに、マラソンを始めたきっかけや、練習法、実戦時の心得、マラソンにまつわるエピソードなどを 懇切丁寧に解説している。数少ないマラソンの入門書と言っても過言では無い。これ読んで、ますます走りたくなってきたで〜。

 

奪われし未来

シーア・コルボーン他 著  長尾 力 訳 翔泳社
1997年 1800円(本体)

 カーソンの『沈黙の春』に続く環境問題を摘発した名著。日常口にしている食品などに含まれるごく少量の化学物質が体内に蓄積し、次世代に生殖異常や脳障害などを引き起こしていくことが、科学的に実証されていく。それらの物質は、すでに地球上に蔓延しており、あらゆる生物が被害を受け、とりかえしのつかない事態に陥っているという、身の毛もよだつ話。以前遺伝子モノに凝っていろいろ読んでいたけど、この本は更に知的好奇心をくすぐる。科学者になってもっと探ってみたい!

 

ナニワの資本論

青木 雄二 著 朝日新聞社
1999年 本体1200円

 青木氏が1年以上にわたって朝日新聞に連載していたエッセイがまとめられている。表面的には誰でも知っているような事がらを彼流に解説してあるのだが、マンガ家としてデビューするまでに30いくつの仕事を変わったというだけあり視点が単純ではない。「あー、そういうことだったのか」と素直な私は、何度彼の意見にうなったことか。これから世にでていく若者におすすめ。生きていく知恵が授かります。

 

思春期病棟の少女たち

スザンナ・ケイセン著 草思社 
1994年 本体1553円

 映画「17歳のカルテ」の原作。著者は、自殺未遂がきっかけで「境界性人格障害」と診断され、18歳から2年間を精神病院の思春期病棟で過ごした。精神病院は「パラレル・ユニヴァース(隣にある別世界)」のひとつ、移ることはごく簡単で、そして不思議と、こちら側からは向こうが見えないけれど、向こう側に行ってしまうと、こちらの世界がとてもよく見えるという。この本を読むと、まさに、今自分がいる世界はどんな世界か、自分がそこでどう振る舞っているのかが見えてくる。

 

沖縄オバァ列伝

沖縄オバァ研究会 編
2000年 1300円(本体)

沖縄のおばあさんは「オバァ」といって、強烈に堂々とあつかましくて、しかも人情に厚い人々らしい。80歳でも現役で水商売をしているオバァなど、逞しい人物が次々に登場する。それを、沖縄とオバァを愛する若者(といっても中年)たちがいとおしく語っている。昔どこにでもいた(であろう)おせっかいでおもしろいばあさんたちが、今も沖縄には生きている。理屈抜きに、とにかく笑える。

 

 

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