第30回

赤目四十八瀧心中未遂

車谷長吉 著 文藝春秋
1998年 本体1619円

あるエリート社員だった男が仕事を辞め、自らその日暮らしの生活に身を持ち崩していく。この本は男が「底辺」を過ごした尼崎を舞台に、人間の生活が描かれている。それにしても著者の車谷氏は、いったいどんな生活をしてきたのだろうか。あまりにも、「底辺」を生きる人間たちの生活がリアルに表現されている。人生を生きるていく意味を深く考えさせられる一冊。直木賞受賞作品。

 

出会った相手がわるかった!? 〜札つきのフェミニストを妻にして〜

宮本博文 著 かもがわ出版

2000年 本体1600円

一言で言えば、20年間の夫婦の変遷を会話で描いた本なんだけど、これがとってもおもしろい。夫が書いているというのが、まずはめずらしい。対等で互いを尊重する関係を求める妻と、普通のオトコらしくしたい夫だから、たびたび生じる行き違い。妻がいつも冷静で確信を持って生きているのがすがすがしい。うろたえる夫も努力して変わっていくのが健気でいい。家事をするだけでいいオトコ(夫)だと自負しているフェミニストまがいの男性に読んでほしい本。

 

夕方ハルピン駅で

岸本葉子 著 NTT出版

1996年 本体1262円

 中国留学していた著者が再び中国を旅し、留学当時と現在の様子を書き綴ったもの。端正な文章で、モノトーンの景色の所々に色彩が感じられ、その土地の体温をも感じさせてくれる。

 

本の雑誌血風録

椎名誠 著朝日文庫
2000年 本体760円

 「本の雑誌」がいかにして生まれ、いかにして多くの人々の目に触れるまでになっていったかを実録「風」に書いたもの。はじめは趣味の範疇でやっていたものが、どんどん大きなものになって、それに関わる人々の生き方に多かれ少なかれ影響を与えていく過程が生き生き描かれていて面白い。何でもどーんとやってみる時があってもいいなと思う。

 

 

ある夜、ピラミッドで

田中 真知 著 旅行人
2000年 本体1700円

 装丁がすごく素敵で思わず手にとりました。著者についての知識もまったくなくて、何の先入観もなく読み進みました。日本ではエジプト=ピラミッドというイメージが強くエジプトの普通の人たちの暮らし振りはなかなか見えてこないのですが、著者の淡々としていながら、非常に多分野にわたる文章を読むうちに、今までの偏ったエジプトのイメージが崩れ、人々の暮らしが身近に感じられるようになりました。エジプトの人々の暮らしや考え方を知る貴重な一冊だと思います。

 

 

おい癌め 酌みかはさうぜ秋の酒

−江國滋闘病日記−

江國 滋 著 新潮社
1997年 本体1600円

 癌告知からわずか187日で亡くなった江國氏の闘病日記。闘病俳句も223句収められている。あまりにも壮絶な内容なので、癌患者は読まない方がいいかもしれない。食道癌だとこのような経過を経るのが普通なのか、それとも江國氏の状態があまりにも悪かったのかはわからないが、江國氏の「クオリティーオブライフ(生活の質)」はいったいどうなっているのか、病院側の治療姿勢を疑う。死ぬまでのわずか6カ月をもっと心安らかに過ごす方法はなかったのか。

 

FACES

FRANCOIS AND JEAN ROBERT CHRONICLE BOOKS
2000年 $16.95

「顔」というタイトルのこの本、モノの表情をとらえた写真集。モップでも電話機でもヘッドホンでも、見ようによっていろんな顔にみえてくる。笑顔のゴミ箱、おとぼけ顔の段ボール、怒っているヒゲそり・・・。モノ好きにはたまらないおもしろさ。私は、にんまり笑うヘッドホンが気に入ったな。

 

はじめての三線

漆畑文彦 著 晩聲社
2000年 本体2000円
この一冊で三線がすらすらと弾けるかちゅうとそんなに甘くはないのよ。ハウトゥものとして読む以上に読み物としてのほうがおもしろいという感もあるくらい。いやいや、三線の選び方から弾き方の基本も事細かに教えてくれるありがたい本です。三線のこと教えてくれる人ってなかなかいないもんね。

 

 

向田邦子 最後の炎

小林竜雄 著 中公文庫
2000年 本体724円

向田邦子さんが45歳で乳がんの手術を受けるところから不慮の航空機事故にあうまでの6年間を中心に、彼女の仕事への迷いやこだわり、「故郷」や家族への思い、死生観など、その人間像を浮かび上がらせようとした本。本人亡き今となっては、その真偽は分からないが、人生というのは、その人の生きようという意志(自覚)が強ければ強いほど、大きな喜びと大きな苦しみが与えられるものだなと思った。

 

海のシルクロード

辛島昇 文 大村次郷 写真 集英社
2000年 本体1900円

 海のシルクロードという言葉を初めて目にした。中国からインド洋、紅海を経てイスタンプールに至る海の道が紀元後1世紀くらいから15世紀までの長い間存在し、ヨーロッパ、インド、中国という国々が盛んに交易を行い、また宗教・文化も様々に伝えられた。ヨーロッパのアジア植民地支配が始まるまで、こんなに頻繁にスケールの大きな海上交易があったことをこの本で初めて知った。写真が多く、詳しい歴史の知識がなくても、海のシルクロードの壮大さが目の前に広がる思いがする。

 

 

 

 

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