第33回

ー大石芳野写真集ー
大石芳野 著 岩波書店
2000年 本体9000円
最近ベトナムに旅行で出かける日本人も多くなり、観光地というイメージで捉えられる事が多くなってきた。でもまだベトナム戦争が終わって25年、いまだに国土には様々な爪あとがあり、人々の心の中には深い傷が残っている。この写真集はベトナム戦争終結から今にいたるベトナムの人々の姿を通して、ベトナム戦争の持つ意味をもう一度じっくりと考える機会を与えてくれる。また、人々の明るい表情や生活の姿に見入ってしまい、自分も同じ街角に立っているような楽しい錯覚に陥るのも楽しい。様々な角度から見ることのできる奥の深い写真集だと言える。

群 ようこ 著 文春文庫
1988年 本体448円
OL群ようこさんが作家群ようこさんになるまでを描いた作品。
「40歳になって今のままの仕事をしていたら満足だろうか?」と考えて、みんなのあこがれ「本の雑誌社」を辞めることを決意する群さん。私が会社を辞めようと思ったときと同じだ。「わかる、わかる、わかるよ!」と20代の群さんと抱き合いたいような親近感をもった。

前川 健一 著 講談社文庫
695円 2001年
最近巷にあふれ返る海外雑学本の多いこと!大抵はじっくり読むに耐えないものが多いのだが、この本は奥が深い。何度も読み返すところも少なくない。タイについての知識・観察力の鋭さがあり、著者の自然体の文章がすっと読む側の頭の中に入ってくる。思わず笑ってしまう文章があるかと思えば、同じように自分も観察している気になってみたりと実に読み応えあり。今度バンコクに行く機会があったらこの本を持っていこうと思っている。

樋田慶子 著 草思社
2000年 1600円
女優である著者の生い立ちや、女優の経験を書き綴ったもの。タイトルである衝撃的な台詞を言い放ったのは著者の祖母。この祖母は新橋で料亭を営んでいたが、著者の人生に大きな影響を与える。それにしても芸能人だけでなく政財会の華やかな人々がぞくぞくと登場する。一昔前の特別な世界のお話。でもこれが実話とは、住む世界が違うってこういう事なのね。

沢木耕太郎著 集英社文庫
2001年 本体743円
一言で言えば、旅の「肌触り」が感じられる本。掲載された写真と文章は、どこか懐かしく、いつか自分が感じたこと、見た風景を想い出させてくれる。美しい「単行本」を本屋で手にして、その重さに買うことをためらっていた。「文庫」というのは邪道かもしれないが、地下鉄の中で揺られながらページを開いて、一瞬違う場所に行くのもいい。

小池 真理子 著 早川書房
1995年 1700円(税別)
25年前に起こった殺人事件。その事件に隠された秘密がこの小説のメインテーマである。「恋」というタイトルからイメージしていたような甘ったるいストーリーではなくサスペンスなんだなこれが。いい意味で裏切られたなって思った。主人公が過ごした青春の日々が、倒錯した人間関係の中で切ない輝きを放っている。本当の恋って何?切なーくなりたい人におすすめ。

死神清水義範 著 角川文庫
2001年 本体457円
売れない役者夫婦が、スターである知人の死に立ち会ったことをきっかけに、売れっ子になっていく。ヒトが死んだときって、にわかにいろんな人が登場する。生前お世話になった後輩だの、前妻の子だの、本当ににぎやか。死人に口はないもんね。著者独特のユーモアで、「死」をとりまく風景が明るく描かれている。日本人の弔い方はこうなのだ、と書かれているが、果たして他国はどうなのか知りたくなった。死について、笑いながら深く考えてしまう本。

山本 文緒 著 角川書店
1996年 460円
もしも、あの時別の選択をしていたら・・・
もし、別の人と結婚していたら・・・。自分の伴侶に頭にきたときなどは、誰しも頭にうかぶだろう。もっとバラ色の人生があって、自分はもしかしてとんでもない貧乏くじを引いたのかもしれないと思ったり。この小説では、ある理由で昔の恋人と結婚生活を体験してしまう。思っていたとおりバラ色か、それともブルーか。ちょっとコワイおはなし。

星野知子著 講談社文庫
2001年 本体667円
つい先日、母娘二人でパリに行った。で、思わず買ってしまった本である。著者と66歳のお母さんが、妹さん家族の住むパリを訪ね、過ごす10日余り。ん?この光景、どこかで見たような、と思う、何気ない日常のドタバタ劇の合間に、それとなくフランスという国のお国柄が見てとれる。いやあ、それにしても、よくぞここまで大量の日本食をパリまで運びましたね。親と旅行する際の参考になりました。

遺言状を書いてみる木村晋介著 ちくま新書
2001年 本体680円
遺言状に関しては第1人者であると私が信じている木村弁護士。決して説教するわけでも必要性を説くわけでもないけれど、やっぱり遺言状書いとこう、と思わせるのがさすがの力量。この本で特におもしろいのは、著者の友人でまだピンピンしている人々に書いてもらった遺言状。個性が発揮されていて読み物として十分楽しめる。こんなのでいいなら自分も書いてみようか、という気になるはず。