第34回

アジアの山紀行

藤田 健次郎著 山と渓谷社
2000年 本体1600円

 近場のあらゆるバリエーションの山を登って、それはそれは楽しそうなレポートを繰り広げてくれる。山の景色や気候はもちろん、地域の文化的特色も記されていてそれぞれの土地に興味が湧いてくる。ただ登るのではなく、危険だった場合は反省をしたり、歴史についての考察も忘れない。いい山行してはるわ。で、この人ホンマに山好きやなあって感じた。

 

エベレストを越えて

植村 直己著 文春文庫
1984年 本体476円

 4度にわたるエベレスト挑戦の記録。2回目には自ら登頂に成功しているが、エベレストの虜になってしまった彼は新たな挑戦を試みる。事故で仲間やシェルパを失った悲しみは深く、生涯癒えることはなかった。これまで、著者は逞しい冒険家というイメージしかなかったが、この本では実直で素朴な人柄が文章に溢れていて、好感をもった。彼の中には、強靱な精神力と人に対する優しさが共存している。この本は、登山記録というよりもヒューマンドラマというかんじ。

 

はじめての夜二度目の夜

村上 龍著 集英社文庫
年 本体400円

 著者を思わせる小説家の男が、20数年ぶりに中学時代の憧れの女性と出会う。おしゃれなレストラン、素晴らしい料理・・・。シチュエーションは恥ずかしくなるほど小説的だが、2人の会話やそれぞれに巡る思いは極めて現実的で、大人になって昔の思い出と対面する、というのはこんな感じかもしれないと思う。最近ちょっと離れてた「村上龍」だが、やっぱりうまい。

 

 

ハノイから吹く風

中村 信子著 共同通信社
2001年 本体1800円

 数奇な運命という言葉がまさに当てはまる人生を歩んだ人というのがこの本の著者です。サイゴン陥落を伝えた日本人女性がいたなんて、全然知りませんでした。ベトナム戦争時に、ひたむきに前向きにベトナムに溶け込んで生活していた日本人女性の生き方は、不況の中で先の見えない混沌とした社会に生きる私たちにいい意味での刺激を与えてくれると思います。

 

北極海へ

野田 知佑著 文春文庫
1995年 本体457円

 カヌーイストでもある著者が、ユーコン川1800キロをカヌーで 下った記録。大きすぎて情緒のない川だけど、出会う人々がおもしろい。著者はどこに行っても自分を失わない。媚びない、へつらわない、迎合しない、自信満々。そして、すばらしい生命力。野性的というのはこの人のためにある言葉だな。

 

 

恋は決断力 

森 まゆみ著
講談社 1999年 本体1700円

 明治時生まれの女性たち13人の恋も含めた人生を描いている。今では肩苦しく考えられがちな明治・大正という時代のしなやかさが伝わってくる。まだ政治も経済も未完成だった分、現代より懐が深く、人生のやり直しもできる時代だったようだ。それにしても彼女たちの生きる力はすごいです。

 

口からうんちが出るように手術してください

小島 直子著
コモンズ 2000年 本体1700円

 

 車いすで生活している脳性麻痺の女性の生い立ちから自立まで。とにかくリアル。高校、大学、社会人へと成長しながらも着々と自立していく様子が頼もしい。健常者の自分になにかできることはないのか?と改めてバリアフリーについて考える機会を与えくれる。そしてなによりも著者自身の言葉で書かれているので重苦しくなく身近な問題として受け止められる。 

 

新釈雨月物語

石川 淳著 角川文庫
1994年 480円

 江戸時代に書かれた上田秋成の「雨月物語」を石川淳が蘇らせたこの本は、私のとっておきの一冊。石川淳氏の訳文がとても美しく、日本語を読む喜びに浸れる。この本はいわゆる怪異文学といわれるものらしいが、つまりはコワイ話。この上なく美しい文体で書かれたこの上なくコワイ話というのは、何度読んでもそそられます。

 

忘れないよ!ヴェトナム

田口 ランディ著 幻冬舎文庫
年 本体533円

 田口ランディのデビュー作(らしい。)旅行記を書く、という「仕事」で訪れたヴェトナムの1か月。「仕事の取材」という範疇をとっくに越えて、すっかり「とことんの旅」となっている。ヴェトナムの人々、旅先で出会う日本人・・・見ず知らずの他人の懐にポーンと飛び込む著者の潔さ(?)に感服。文章は、あらっ?と思うこともあるけど、何だか無性にヴェトナムに行きたくなった。

 

 

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