第36回

熱きアラスカ魂 最後のフロンティア・インディアンは語る

シドニー・ハンチントン著 ジム・リアデン編 和田 穹男訳 めるくまーる
2000年 1800円(本体)

 まず、タイトルがいい。そして表紙カバーが星野道夫さんの写真なのもいい。失われつつあるアラスカインディアンの生活が、ある一人の男が人生を語るかたちで描かれている。生活の様子や心の動き、インディアン社会の変容が手に撮るようにわかりおもしろい。5歳で始めて銃をもち、罠をしかけて回る。生きていくための技術が、子どもの頃から自然と身に着いていく社会っていいな。

 

美しいままで

ネーダーコールン靖子著 秋岡 史解説・編 祥伝社
2001年 本体1600円

 本書は、オランダという国で安楽死の選択を行った一女性の日記をもとに構成されている。1987年に甲状腺ガンが見つかって10年、1997年に安楽死を選択するまでに彼女が辿った道のりは、決して一筋縄ではない。彼女の夫、子ども、親兄姉や友人との関係の中で、自分はどうすべきか、どうしたいのか、常に問いかけた結果であったと思う。それにしても、「これで良かったのか」という、遺された者が必ず抱くであろう問いに自らが納得する答えを出すのは本当に難しそうだ。

 

上と外 全6巻

恩田 陸著 幻冬舎
2001年 419円

 一言で言ってしまえばファンタジー。クーデターによって南米のジャングルに取り残された兄弟が、遺跡をさまよい、そのなかで普段の自分をみつめなおす物語。なかなかどうしてスピード感があって、ファンタジーでありながら真実味があって、ファンタジー苦手の私のはずが、六巻一気読みしてしまった。

 

筑紫哲也の現代日本学原論2外国人

筑紫 哲也編著 岩波書店
2001年 1500円

 最近、新聞やテレビの報道でよく耳にする言葉にグローバリズムという言葉があります。世界の出来事を瞬時に知ることが出来るインターネットや衛星放送等が普及し、今までのように国とか民族単位で考えるのではなく、ひとつの世界として考えたとき果たして日本という国は共存してたちゆけるのだろうか?そんなことを常々思っていたときに目に付いた本がこの本でした。特に日本人は外国人と共存できるか?という論文の個所を興味深く読みました。グローバル化は避けがたいものではあるが、その中で日本人としてのアイデンティテイーを失わず溶け込むことが出来ればいいと思うのですが、言葉でいうほど簡単なものではありませんよね

 

死のクレバス アンデス氷壁の遭難

J.シンプソン著 中村輝子訳
岩波現代文庫 2000年 1000円(本体)

 息のあった二人のクライマー、ジョンとサイモンは、アンデスのシウラ・グランデ西壁に挑む。登頂の後天候が悪転し、下降は困難を極める。事故によりジョーは大腿部を骨折、それでも二人は必死の下降を続ける。しかし、ジョーがクレバスに宙吊りになってしまい、サイモンは、二人共死ぬか、ザイルを切るかの選択を迫られる。これが、まだドラマの中盤にもなっていないなんて信じられないでしょう。このあと想像を絶するおそろしいことが次々と起こるのです。しかも、この本はノンフィクションで、体験した本人が書いているのです。これは本当に山岳文学の最高峰と言ってよいでしょう。

 

陰陽師 

夢枕 獏 著
文春文庫 1991年 本体476円

 不思議な話好きの私が「陰陽師」を読まないわけにはいきません。なんといっても陰陽師」という職業(?)に惹かれますね。占い師や霊媒師というような俗世の感じではなく、なんか神秘につつまれていて。平安時代は、自然に対する畏怖や恐れ、敬いの心があって、陰陽師」という職業がなりたっていてもおかしくないのかもしれません。もし今陰陽師」の安部晴明がいたら、とても生きにくいでしょう。それとも現代にはびこっている悪い人間を退治してくれるかな。

 

黒祠の島

小野不由美著 祥伝社
2001年 886円

 小野不由美ワールドってこれなのね。島のすべてを支配する宗教と、その周辺で起こる殺人事件。この殺人事件と約二十年起こった事件との関連は・・ 島に伝わり、今なお信仰され続ける宗教とは。横溝正史の映画の世界ってかんじ。本格ミステリー。はまるでー。  

 

 

新ゴーゴー・インド

蔵前 仁一著 旅行人
2001年 1600円

 本書は1986年に凱風社から出版されたものに加筆・訂正されたものであるが15年の歳月をまったく感じさせないインドの姿があり、最近出かけた人も思わずうなずいたり、笑ってしまったり、納得したりしてしまうだろう。かくいう私も最近インドに行ってきたが、インドの列車事情とか買い物のやりとりとかまったく変わっていないんだなとつくづく感心してしまったほど。「僕には僕のインドがあり、あなたにはあなたのインドがある。」という著者のあとがきが印象的で、この本の読者の一人一人が違ったインドを発見したら、ほんとすばらしくて楽しいことだと思っています。

 

虎口の総統李登輝とその妻

上坂 冬子著 文春文庫
2001年 571円(本体)

 著者があとがきで述べているが、「気がついたときには経済的に豊かな楽しい台湾が隣接していた」というのが、まさに私の台湾に対する印象である。しかし、その姿がこれまでの台湾の歴史から言えばごく最近の姿にすぎないことが、この本を読むとよく分かる。李登輝とその妻という、2人の人物像も実に魅力的に描かれているが、それのみならず、様々な力関係が交錯する台湾の戦後史が垣間見える1冊である。

 

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