第38回(2002年2月)

訓覇 法子文 ブー・モッスベリィ画 東京書籍
1994年 1553円(本体)
きのこや木の実を森で集め、年中行事を楽しみ祝う。ノーマライゼーションが人々に浸透し個人個人が充実した暮らしを営んでいる。それぞれの章に、居心地の良い豊かな空気が流れているようだ。素朴と合理的、個人主義と人なつっこさ一見相反することのようだが、スウェーデンでは調和し溶け合っている。どのエピソードも、スウェーデンの魅力と深みがじんわりと染み込んでくるのよ。

アジアで暮らすとき困らない本福永 佳津子編 The Japan Times
1998年 2000円(本体)
この本で取り上げているのは、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア。住居の探し方から、買い物場所、学校の制服、医者の見つけ方など具体的なアドバイスが充実している。ただ、読者を海外駐在員夫人に設定しているようなので、ガードマン付きの高級住宅に暮らしメイドを雇い、運転手付きの車で子どものお迎えという生活ができる人には役立つだろうという内容だ。自費で移住しようという場合に必要な情報、例えば滞在手続きや税、社会保障などについては、この本ではわからない。あくまでリッチな短期滞在者向き。

ビートたけし 祥伝社
2000年 1200円(本体)
「ビートたけし」の詩集。同一人物なんだからと言われそうだが、「北野武」の映画と同じ空気を感じる。饒舌なようで饒舌でない。激しいのに静か、静かなのに激しい。それぞれの詩の最後の1行か、2行は、この人でなければ吐けない言葉のような気がする。

森下 ヒバリ著 理論社
1996年 1359円(本体)
ティーンエイジャー向けに書かれた作品ですが、年令を問わず楽しめます。著者はこの作品が書かれた時点で10年以上もタイと日本を行き来し、その内2年間はタイに住んだという経歴の持ち主です。タイの基本的な情報はきちんと押さえた上で、生活・食べ物についても詳しく書かれていて、何より明るく楽しい雰囲気が伝わってきます。

闇を歩く中野 純著 アスペクト
2001年 1400円(本体)
どこもかしこもピカピカに照らされている日本で、闇を楽しむためのガイド。電気をつけずに風呂に入るという手軽な方法もあるが、ぜひやってみたいのはナイトハイク(夜の山歩き)。終電に乗って遊びにいくところからワクワクが始まる。闇弁(闇の中で食べる弁当)もいいな。しかし内容もさることながら、この本はセンスがいい。文章に感性と知性がにじみ出ているし、ブックデザインもきまってる。深夜の登山道として載っている写真は、ただのまっ黒。芸術的センスのある人にぜひ読んでほしい本。

齋藤 孝著 草思社
2001年 1200円(本体)
美しい日本語はどれほど人生を豊かにしてくれることだろう。美しい景色をみたとき、悲しいときや辛いときに、口をついてでてくるのは、「受験戦争」時代にむりやり覚えた国語の教科書。いやいや暗唱した古典、漢文、詩、名文がどんなにか私を助けてくれていることか。やはり人生のある時期に、わけもわからず無理矢理勉強することも必要だと思う。この本は、共通一次世代にはたまりませんなあ。

織田 昭子著 サンケイ新聞社
1971年 580円
私の住む町は織田を郷土の作家だと誇っている。かなり生活乱れてますけど、ええんかいな。なるほど無頼派って言うのはこういうのなんだね。著者の昭子さんは、内縁の妻として織田の人生最後の三年を見つめた人。二人の東京での馴れ初めはドラマティックで、大阪についてきてしまった昭子の日々は織田共々壮絶。織田の死後、昭子の見のふり方も奇怪で面白いの。何故か林扶美子邸で居候するのよ。

保坂 修司著 筑摩書房
1994年 1068円(本体)
今、世界中で注目されているイスラム教。日本人の私には生活が宗教と一体になっている感覚は頭ではなんとなくわかったような気がしても、実体験として理解できない。莫大な石油収入をバックに高度な福祉社会を築いた中東の豊かな国にも乞食がいて、彼らは高収入を得ているという。なんとも不思議で面白く、読むうちにイスラム社会の一端が垣間見えてくる。イスラムを知るための格好の入門書である。

林 巧著 知恵の森文庫
2001年 本体495円
旅先でふと音楽を耳にして、その音楽に包まれるような感覚を覚えたことはないだろうか。その街の風景や匂い、温度や湿度と合わさって、音楽が身体にしみこんでくる感じ。この本を読むと、その時の感覚を思い出す。順徳、シンガポール、バンコク、バリ、香港・・・著者が出会ったアジアの様々な楽器とそれによって奏でられる音楽にまつわるエピソードの数々。部屋で聴いても全く別物だと分かりながら、この本にあった「二泉映月」が聴きたくて、「二胡」のCDを買ってしまった。

海の向こうで暮らすグローバル・リンクス・ネット編著 BNN
1997年 1236円
前半には移住方法のあれこれを、放浪や海外ボランティア、国際結婚などの実例をあげて書いてありおもしろい。後半が「国別データファイル」で、在留邦人が多い国、長期滞在者の多い国の上位45カ国を選んである。しかし、1国あたり2頁だけの情報ではなんとも寂しい。国ごとに「暮らしやすさ基準」が、5項目(気候、物価など)で採点されているのは、比較しやすくてよい。この本は、移住先をざっと絞るために使用して、その後他の方法で詳細な情報を集めるのがよいだろう。

立花 隆著 文春文庫
2001年 476円(本体)
23人の臨死体験を詳細に聞き取った本。ここで紹介されているどの体験も「死への恐怖」を感じていない。臨死体験をしたことで却って死ぬのが怖くなくなったと証言している。そうだとしたら臨死体験をした人たちは、死への恐怖心を癒す貴重な伝道者なのかもしれない。