第39回(2002年4月)

ナンシー関 著 カタログハウス
2000年 本体1260円
出されたお題を記憶のままにスケッチしましょう。こんな課題のもとに集まった奇妙なスケッチたち。かえる・かめ・自転車等、描けそうでかけない。よくもまあこんなデタラメな絵が描けたねえって、ページを開いたとたんにクスッと笑って、ナンシー関さんの寸評を読んで大爆笑。とにかく笑いたい人にお勧め。年齢男女を問いません。どなたでも腹のそこから笑ってください。

仙人の壺南 伸坊 著 新潮文庫
2001年 438円(本体)
中国のお話って不思議。オチのない話、残酷な話、意味不明の話(これが多い)、無気味な話。そんな怪奇小説の名品を、南伸坊さんがとぼけた絵で楽しませてくれる。ちょっとした解説もおもしろい。原作の中国古典文学を読んでみたくなった。起承転結やハッピーエンドは求めないこと。意外性を好む人にはお勧め。

大竹昭子 文/写真 河出書房新社
2002年 本体1800円
60歳を過ぎて「作家」になった須賀敦子さん。本書は、須賀さんの作品を丁寧に読みとくとともに、彼女が訪れた場所や、出会った人々を丹念にたどった旅の記録である。書くことを常に求めながら、そこへいきつくまでには長い時間がかかった。その道のりは本当に苦しいものだったろうと思う。でも、その間の様々な経験や努力が後のすばらしい文章に結実していった気がする。先の見えないもどかしさを感じながらも時間を無為に過ごしている自分が恥ずかしくなった。

工藤 美代子著 世界文化社
2000年 1500円
ノンフィクション作家である著者が14歳から旅に出たいという強烈な欲求を持ち、もちろん取材旅行も含めて今まで世界中を歩いた記録である。旅に出るのは現実からの逃避であるとともに自己の内面を見つめなおすまたとないチャンスでもある。年令を重ねると旅のスタイルも変わってくる。若い頃から現在にいたる旅のスタイルの変化が自分にも重なって、なるほどそうだなとうなずきつつ楽しめた。この本で、紹介されている旅先はメジャーなところではないのでその点も非常に興味深かった。

生物学個人授業岡田 節人/南 伸坊著 新潮文庫
2000年 本体400円
発生生物学の権威である岡田先生から個人授業を受ける南伸坊さん。南さんは「理解の遅い才能」を発揮して疑問をくり出す。「ジュラシック・パーク」や、「オタマジャクシはカエルの子・・」という歌などをとりあげて、難しい話もわかりやすく料理されている。それは先生の話のおもしろさと南さんの理解の奇抜さによるもの。南さんのイラストは疲れた脳を和ませてくれる。個人授業シリーズの第1作。

O.R.メリング 著 講談社
1995年 本体1359円
現実と妖精界の境界があるような無いような。自分のすぐそこでファンタジーの世界が繰り広げられる。そんなストーリー展開で、ファンタジー初心者にもとっつきやすそう。ちょっと展開が安易かなって感もあるけど。十六歳の二人の女の子が主人公。異界の存在を信じる二人は休暇を利用してイングランドを旅する。ところが初日の夜一人が妖精にさらわれて・・・。登場する男共どいつもこいつもかーっっ!カッコよすぎ。

野村 進著 講談社
2001年 680円
「アジアは古寺の大きな釣り鐘のようなもので、撞木をつく旅人によって浅い音も深い音も響かせる。」著者の前書きに書かれた言葉だが、実に味わいの深い文章だと思わずうなってしまった。ぜひとも自分は、出来るだけ深い音を長く響かせたいものだと思う。著者の四半世紀のアジアの旅のなかで、得られた知恵は、自分の感性のみで書かれた他の旅行記やガイドブックとは一線を画している。読んで役に立つ情報も得られ、著者の旅が文章で楽しめるなかなかの優れものです。是非旅立つ前にご一読を!

川上 弘美著 中公文庫
2001年 本体457円
川上弘美さんの短編集。表題作『神様』の出だし、「くまにさそわれて散歩に出る。」がいい。そして、それは夢の話でも何でもなく、主人公は本当に「くま」と川原に行くのだ。妙に礼儀正しく、よく気のつく「くま」と主人公の淡々とした会話が何故だか心地良い。『蛇を踏む』が体質に合った人にお勧め。

ハッピーローマ取材班編・著 双葉社
2001年 本体1500円
装丁や文体がちょっと気恥ずかしいと思う人もまずは一読を。ローマの街歩きをするのに便利な情報が盛りだくさん。しかも切り口がなかなか面白い。例えば、そのエリアの物価が分かるということで、エリアごとのエスプレッソの価格が載せられていたりする。教会のコンサートや美術品巡り、朝市や蚤の市、人間ウオッチング、おもしろい日用品や雑貨探し等々、一人旅が好きな人間の興味のツボをよく押さえていると思う。