第40回(2002年6月)
田中 真知著 旅行人
2000年 本体1700円(本体)
日常の出来事に驚き、イスラム教や、数々の宗教に深い探究心を持って、カイロで暮らしていた著者の日々が多彩な方面から記されている。エジプト人と、日本人の根本的な人間性の違いがユーモアをもって綴られている。ピラミッドにまつわる不思議話も神秘的!。ディープで愉快、時に厳かな気持ちで読み進めましょう。
この地球(ほし)を受け継ぐ者へ石川 直樹著 講談社
2001年 1700円(本体)
「Pole to Pole 2000」これは北極から南極まで人力移動しながら、各地で自然保護活動を行っていくプロジェクト。世界中から選ばれた男女混合8人の若者の中に著者はいた。彼等は、寝食をともにしながら体力の限界に挑んでいく。その軌跡だけでも十分興味深いのだが、著者の好奇心と柔軟で前向きな性格が文章に表れていて特におもしろい。ただの冒険ヤローではないなってかんじ。今年上半期で一番のおすすめ。
西岡 文彦著 講談社
2000年 本体1600円
絵というものはできるだけ「先入観」なく観たいと思う。でも、そうはさせてくれない絵があって、私にとってその典型が聖書の世界を描いた絵だった。著者曰く、「絵にも、単語や文法のようなルールがある。」この本は、いろいろな画家の作品に描かれた「受胎告知」をはじめとする12の聖書の場面を取りあげ、その場面の意味、描く際の「ルール」はもちろん、画家の個性や、その絵が描かれた時代性までもわかりやすく解説してくれている。中世やルネッサンスの頃の絵画に触れるには、絶好の入門書だと思う。
日比野 宏著 雷鳥社
2002年 1600円+税
アジア各国を1987年から一年あまり旅をして、その後も様々なアジアの人達とかかわってきた著者ならではの作品。登場人物もなかなかユニークで、その人たちと最初に会ってから十年後にまた会いに出かけた時の事を作品にしている。人と違う感性や価値観を持ちつづけるのが難しい日本社会から脱落しそうな人やしてしまった人、そんな人たちをもアジアでは受け入れられるんだということが実感できた。それとともに、日本も様々な人や価値観を認める社会であったらどんなに生きやすいだろうかとも思った。
ヒトの鳴き声 〜ホーミーと牛とマッキントッシュ中野 純著 NTT出版
1998年 1800円(本体)
ホーミーと呼ばれる一人二重唱の達人である著者は、ある時、牧場の牛にホーミーを聞かせてみた。すると牛たちがぞろぞろ集まってきたのだ。これに端を発して、著者は沖縄でイルカ相手に、アフリカで象やキリン相手にホーミーをすることになる。しかしずいぶん変わり者だよこの人は。でも、そんな自分をよくわかっていて客観性を保とうとしているところに好感が持てます。
白洲 正子著 平凡社
1997年 本体1524円
ああいう風に歳をとりたいと思える数少ない女性の一人が白洲正子さんだ。白洲さんをダイジェストで味わうにはもってこいの本。「白洲正子自伝」よりも多角的に「白洲正子」の世界に入り込める。それにしても、歳を重ねるごとに白洲さんはかっこよくなっていく。白洲さんの愛した骨董と同じように、内面の厚みが外見に現れているのだろう。
朝の少女マイケル・ドリス著 灰谷 健次郎訳
新潮文庫 1997年 514円(本体)
自然の豊かな南の島で少女はのびのびと育っている。暖かい両親と、ちょっと腹だたしい弟といっしょの暮らしの中で、大人になるための経験を積み重ねていく。ゆったりと幸せな気分で読める本である。しかし最後の2頁は衝撃的だ。予想だにできないどんでん返しに、言葉を失ってしまった。著者は最後の仕掛けに効果をもたせるために、かくも美しい物語を書いたのね。まいりました。
小澤 征爾・武満 徹著 新潮文庫
1984年 本体552円
この本は、1978年5月、1979年11月、12月の3回、小澤・武満両氏によって行われた「対談」をもとに編集、加筆された本である。最初の「対談」が行われた年から今日まで20年以上の歳月を経ているが、日本の音楽環境を憂う両者の言葉はいまだ刺激的で、色あせていない。そして何より、文字からでも両者それぞれの「音楽」に対する熱い思いが伝わってくる。音楽というのは、本来原始的個人的なものなんだなと思った。
香山 リカ著 河出書房新社
1997年 本体1300円
独身かどうかにかかわらず、老後をどう過ごすかというのは、女性たち共通の悩みではないだろうか。いずれやってくる老後を、血のつながりにない者同士、助け合って過ごすための共同住宅に申し込んだ女性たちの今をオムニバスで描いている。本のタイトルと内容があっていないので手に取りにくいが、これからの老後を考える上での一つの理想を提案している。