第41回(2002年8月)

カーラ・ファイン著 扶桑社
本体1524円 2000年
自殺により亡くなった人が、配偶者・親・兄弟・友人等のごく親しい人であるとき、遺されたものは自殺者を責め、自殺者を苦しみから救えなかったことで自分を責め、心に深い傷をおい悩みつづけるという。遺された人々がそれぞれの心の葛藤を消化し克服する過程をインタビュー形式で採集している。大切な人に頼りにされず、自殺という蚊帳の外に置かれたら…ただ事故で亡くなるのとは確かに違うよなぁ。
ほんとうの自分を求めてグロリア・スタイネム著 道下匡子訳 中央公論新社
1994年 3000円(本体)
副題は「自尊心と愛の革命」。その名にふさわしい本だった。どんなに勇気と自信にあふれている女性たちでも、自分のすべてが大好き!と言える人はほとんどいないのでは?自分で自分を愛してやることって、実は難しい。この本には、自分の心を見つめ、親や友人や男性との関係を振り返り、心に栄養を与えるためのヒントがつまっている。どう表現しても陳腐に聞こえてしまうくらい、この本にはとにかくまいった。座右の書とさせていただこう。
下川 裕治著 徳間書店
2002年 514円
ほんとうまいネーミングだと読み終えて思った。ほどほど旅行したい人きっとたくさんいるはずです。実は私もその一人です。考えてみたら、ガイドブックって普通のパッケージツアーのレベルで旅行する人向けか、あるいはバックパッカー向けかどっちかしかないのが現状です。ほどほどの旅をするのもなかなか年季とテクニックがいるようです。貧乏旅行そろそろ卒業しようかなという人達、アジア旅行ほどほどの費用で行きたいひと是非ご一読を!
ALASKA'S
THREE BEARSSHANNON CAETWRIGHT 文 SHELLER GILL 絵 Sasquatch Books
1990年 8.95ドル
白熊、黒熊、茶色熊(グリズリー)の3種類の熊が偶然出会った。3匹は共に旅をしながらそれぞれの家をめざす。アラスカに生きる3種類の熊は、体格も好きな食べ物も暮す場所も異なるのだが、この美しい絵本を読んでいるうちにそれらが自然と理解されていく。頁をめくるごとにわくわくするくらい絵が楽しい。熊を知ることは、アラスカを愛するための第1歩。
星野 博美著 文藝春秋
2001年 本体1524円
大宅賞を受賞した前作「転がる香港に苔は生えない」では、茶楼に通いながら返還前と返還後の香港を描きだしてみせた。日本に戻った著者はファミレスと銭湯を通して日本を視ている。混沌としている香港には、良くも悪くも人間のエネルギーを感じるが、ファミレスから見える日本は不快だ。ところが銭湯に視点を移すと日本は本当に魅力的だ。しかし銭湯に象徴されるようなもので構成されている社会には、著者同様、私も生きられないだろう。

松平 盟子著 東京書籍
本体1600円 2000年
四季折々のパリの様子が詰め込まれたエッセイ集。センチメンタルな中にも時おりユーモアがちらりと顔をのぞかせるあたりに、パリでの著者の暮らし振りがうかがわれる。やさしく落ち着いた文章は、なるほど詩人の手によるものかと心地よい。各章に現代短歌が詠まれていて、なんとなく切ない読後感。

日比野 宏著 凱風社
2002年 1600円
最近の日本は空前のベトナムブームに沸いているように見えます。雑誌もこぞって特集を組んでいるし、旅行のパンフレットやガイドブックも多いですよね。きっとこの夏ベトナム旅行計画している人も多い事でしょう。著者が4年間にわたって何度も訪れたベトナムの記録であるこの本は、普通のベトナム人を知るのに最適であるとともに読み物としてもおもしろい。
野村 進著 文春文庫
2002年 本体524円
日本ではない地で生きる9人の日本人の物語。花の大農園の経営者、不動産アドバイザー、神父、柔道指導者、・・・・。たった9人の物語とはいえ、日本の「組織」という枠から離れて、言葉も文化も異なる国で、自ら考え、行動することで道を切り拓いてきた彼らの物語は、どれも刺激的だ。それは、彼らが同じ日本人でありながら、漫然と日を過ごす人間が失ってしまった「生きるたくましさ」とでもいうものを思い起こさせてくれるからかもしれない。
川上 弘美著 平凡社
2001年 本体1400円
年の差のある大人同士の恋を描いた小説は少ない。高校の時のセンセイと何十年ぶりかで偶然、飲み屋で再会した。もちろんすぐに恋に落ちるわけではなく、飲み屋で偶然会う関係がつづく。その飲み屋での会話がとても美しい。年をとってからの恋いには、死がつきまとう。特に年の差のある二人には、死は二人の死ではなく、センセイ一人の死なのだ。センセイはそれを考えると恋愛に踏み込めない。ピュアさが心にしみる作品。
近藤 紘一著 文春文庫
1985年 本体457円
私たちはベトナムという国の歴史を人々をどれほど知っているだろう。この本は、新聞記者であった著者が、1975年のサイゴン陥落前後の状況を、自分自身のベトナムでの生活体験も交えながら記したものである。ベトナムという国の風土や歴史とそこにある人々の暮らしがいかに密接に結びついているかがよく分かる。それにしても、仕事で一時赴任しただけの人が、ここまでその国に溶け込めるのも珍しい気がする。