第42回(2002年9月)
トビイ ルツ文・絵 PHP研究所
本体1400円 1400年
ベルギーの美しさや、日常の豊かさを紹介しているベルギー滞在記。気取らないのにおしゃれ、等身大の暮らしを大切にする。そんなアントワープの様子は、著者の暮らしのスタイルも反映されてのものかもしれないけれど、毎日が楽しそう。これぞヨーロッパの街暮らし決定版!って感じです。豊かでやさしい気持ちになれるよ。
経験を盗め糸井重里 著 中央公論新社
2002年 1800円(本体)
糸井重里が二人のゲストを迎えて対談する。次々相手を替えて18回。その組み合わせがおもしろい。人類学者と奇祭の好きな漫画家が祭りについて語り合ったり、理学博士と不眠症のライターが眠りについて話し合ったり。個人的には「眠りのお話」「骨董のお話」「風邪のお話」が特によかった。大学の講義がこんな感じだったら、ちゃんと聞いただろうに。
NHKスペシャルアジア古都物語プロジェクト編 NHK出版
2002年 1400円
テレビでご覧になった方も多いと思います。活字で読むと、映像では現れていなかったこともあったり、同じ文章を読み返したりもでき、ひときわ鮮烈な印象を受けました。私が思い描いていたのは、単なる沐浴とか死体が焼かれて流されるとかいった表面的なものでしかありませんでした。ベナレスという街が「死を迎え入れる聖地」であると本の中で書かれていますが、まさしくそのことが写真と文章で表されています。
狼は帰らず〜アルピニスト・森田勝の生と死佐瀬 稔著 中公文庫
1998年 838円(本体)
森田は何よりも山を優先し、20年間次々と難関の岩壁を攻め続けた。技術は群を抜いていたが、性格は自己中心的でしかも率直すぎて協調性がないため、友と呼べる人はいなかった。幼少期が不遇であったことが原因なのか、何かに復讐するように無茶なコースに敢えて挑んだ。それは妻子を得てからも変わらなかった。孤高の人というよりは、死に急ぐ無謀なアウトローという感じがした。
高岸 弘著 講談社
1998年 本体1600円
みんなが幸せになれる「ウソ」をつくのがイタリアン、と筆者はいう。確かにこの本に紹介されている「ウソ」は芸術的だ。それもイタリアに住んでいた筆者が仕入れた、実話らしい。(実は真っ赤なウソかも・・・。)特にドロボウが仕掛けるウソはすごい。被害者も含め大がかりな舞台で演じているようなものだ。被害にあった人が「幸せ」になったかどうかはわからないが、見物人(読者)は、抱腹絶倒するしかないでしょう。まじめな日本人にはとってもおすすめ。
串田孫一他編 博品社
本体1600円 1997年
作家、登山家、評論家華やかな顔ぶれによる穂高岳登攀記を集めたもの。意外な人の作品があったり、ええっそんな所から登りますかぁなんていう発見もあり、読めばどの文章も、穂高の山のにおいや澄んだ空気が蘇ってくる。あの人もこの人も穂高に特別な思い入れを持っているようだ。それにしても、みなさん山好きなのねえ。私もだけど…
譚 ろ美編・著 新潮社
2002年 1900円
ありきたりのガイドブックでは物足りない人、食べ歩き・ショッピングだけでなく歴史や経済にも興味のある人にはもってこいの香港ガイドです。踏み込んでいながら楽しく、見るだけでなく読む楽しみがあるので、香港に行く予定のない人も面白く読めます。ジャーナリストであり日本にも中国にも造詣の深い著者ならではのコラムやインタビューも豊富で、表紙もなかなかいい雰囲気で手にとって見たくなることうけあいです。
向田 和子編著 文春文庫
本体648円 2002年
著者は向田邦子さんの妹。家族の目を通してみた向田邦子さんの姿が素直な文章で綴られている。家族だけが知るほんのちょっとした出来事が、彼女が書いた数行のエッセイに見事に凝縮されていることに感心する。それにしても、亡くなってもう20年以上たつのに、どうも彼女の本が出ると手にとってしまうのは何故だろう。凛とした、という言葉が似合う稀な人のような気がする。
高野 和明著 講談社
本体1600円 2001年
仮釈放中の青年と刑務官の男が、記憶を失った一人の死刑囚の冤罪を晴らす仕事を請け負う。手がかりは、刻々と近づく「その日」を待つ死刑囚がふと思い出した、階段を見たという記憶。事件の真相が明らかになる過程は、同時に青年と男が否応なしに自分自身の「過去」と向き合わされていく過程でもある。主人公2人をはじめとする人々の心の葛藤の描写が見事。単なるサスペンスの域を超えて、「刑罰」は何のためにあるのかという問いの答えを思わず探そうとしてしまう1冊である。