第43回(2002年12月)

がん患者学

〜長期生存をとげた患者に学ぶ〜

柳原和子著 晶文社
2000年 本体2600円

 末期がんの診断を受けた後、長期生存している人たちの体験談。医療過誤などの裁判を担当した弁護士と著者の対談。著者自身の末期がん闘病記。以上の三部構成で成る。登場する患者たちが、西洋医学に頼るばかりでなく、免疫療法・自然食療法・気功を取り入れ、体質改善を試みる様子に激しい焦りを感じた。果たして、末期と診断された場合、抗がん剤や放射線療法を拒否するという選択が自分にはできるのだろうか。

 

よくわからないねじ

宮沢章夫著 新潮文庫
2002年 476円(本体)

 この本をどう説明すればよいのか、よくわからない。著者は物事や言葉の用法などにいちいち疑問をもつのだ。そのこだわりかたが、知的でセンスがあって、しかもマニアック。例えば、「趣味」とは何かという疑問をもって、「趣味の店」とは何を商うのかと考え、野球選手の趣味について考察する。こうして説明するとおもしろくも何ともなくなってしまうけど。この本をおもしろいと思ってくれる人となら、よい友だちになれそう。

  

インド不思議研究

発毛剤から性愛の奥義まで

山田 和著 平凡社
1500円 2002年(本体)

 何より副題にひかれて手にとりました。マニアックな本ですよ!でも、おもしろかった。取り上げているテーマが日常の何でもない物から壮大な歴史、思想にいたるまでさまざまなテーマを取り上げて、それを掘り下げているところが、実に興味深くて、本の世界に吸い込まれるようにして読んでしまいました。ところで、私が面白かったのはあとがきです。筆者の生活ぶりが垣間見れた感じで、この人ならこの本を書くだろうなと感心してしまいました。

  

イスタンブール時はゆるやかに

澁澤幸子著 新潮文庫
1998年 438円(税別)

 20年来トルコに通い続けている著者。現地で出会った男性と親しくなり、各地を案内してもらう。それから現在まで家族同然のつきあいをしているとか。なんて、うらやましい。旅慣れているし、行動力と勇気があってすごいなーと感心したけど、ちょっととっつきにくかった。 史跡を訪ね歩きながら、その土地の歴史も語られているのが、一般の旅行記と異なる。

 

贅沢貧乏のマリア

群ようこ 著 角川書店
1998年 本体438円

 森鴎外の秘蔵っ子、森茉莉さんの作品「贅沢貧乏」を読んだ。彼女独特の美の世界を私は好まないが、その生活へのこだわりは素敵で印象深い。そんな茉莉さんという人を群ようこさんの視点で捕らえたのがこの作品だ。私が「贅沢貧乏」で感じた違和感や魅力を、群さんはうまく表現してくれている。それにしても森鴎外が子ども達へ与えた影響の大きさにあらためて驚いた。

  

雲の上の支配人〜23年間の穂高岳山荘生活記〜

神憲明著 山と渓谷社
1989年 本体1262円(絶版)

  そこに行くと何故か心躍る、穂高岳山荘。それは、この本の著者でもある支配人のジンさんの心遣いあってのことだったのですねえ。登山好きのへなちょこ素人には知ることのできないような、早春の山小屋開きや、登山道の整備の様子に感心することうけあい! かねがね疑問に思っていたあの断崖にある数々の梯子の取り付け方の謎も解けました。

 

悲しみの国にすべてを捧げて

カルラ・シェフター著 主婦と生活社
1600円 2002年

 アフガニスタンのこと覚えてますか?そう問いかけたくなるほど今の日本ではアフガン問題は忘れられようとしています。9.11が起きる前からアフガニスタンという国がおかれていた状況がこれほど貧しく過酷だったかと改めて思い知らされた思いがします。著者はドイツ人のベテラン看護婦で、単身アフガニスタンで医療活動に参加しています。自身も外国人であるためにさまざまな危険に見舞われ、マラリアに悩まされながらも、何とか絶望の淵にいるアフガンの人々を助けようとしています。この世にこんなにも宗教戦争に翻弄され続けた民族がいるのかと改めて怒りを持ったとともに、日本人であることがそれだけでどんなに恵まれているかを改めて思い知らされた一冊です。

 

阿弥陀堂だより    

南木 佳士 著 文春文庫
2002年 本体505円

 作家として作品を世に出せず自分の存在意義を自問自答している男と、医師として医療の最前線にいながらやがて心の病で薬を手放せなくなる妻。2人は都会を離れ、男が生まれ育った故郷の山深い村で新たな生活をスタートさせる。そこでゆっくりと自分自身を取り戻していく2人。村人を祀る「阿弥陀堂」守りの老婆の暮らしぶりやその語る言葉が、自然の移り変わりが、時の流れが、とにかく優しく心に染みる作品。

 

痴人の愛

谷崎潤一郎著 新潮文庫
本体 514円

 なんで今頃「痴人の愛」なのか、と言わないでほしい。昔の名著が今ちょっとしたブームなのだ。私の友人はこの本を「昔の『ペログリ日記(田中康夫)』だ」と評した。それにしてもこの本は何なのだろうか。確かに文章も構成も上手い。があまりにも内容がバカバカしい。男性だったらもしかして、理解できるのかもしれないないが、女性はこういう本を面白いと思うだろうか・・・。
 私はこれからしばらく昔の本にひたってみようと思います。

  

 

なたぎり三人女

群 ようこ 著 幻冬舎文庫
2002年 本体495円

 (1)働いている、(2)時々集まる女友達がいる、(3)いろいろなことに興味・関心がある、(4)しかし、あまり物事に固執する方ではない、(5)適度に年を重ねている−−−。こんな要素に思い当たるフシのある女性におススメ。群さん、一体こんなエピソードをどこで仕入れて来たの?というくらい、とにかくどこかで聞いたようなエピソードが満載で笑える本。

 

 

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