第51回(2004年2月)

よく死ぬことは、よく生きることだ

千葉 敦子著 文春文庫
1990年 本体514円

 「死」について「前向きに」考え始めたのは、学生時代に読んだ著者の本がきっかけだった。彼女ががんで亡くなってから随分時が経ったが、その文章は今だ色あせることなく、病気との向き合い方や医療のあるべき姿等、変わらず存在する問題に様々な示唆を与えてくれる。同時に、強い人だとばかり思っていた彼女の文章の端々に、自分自身が思う通りにならないもどかしさや、言いようのない不安が見え隠れする。そんなあたりまえのことが、昔は見えなかった。


顔をなくした女

大平 健 著 岩波書店
1997年 1600円

 著者が診察した精神病患者の症例と考察が各章にまとめられている。言っちゃ悪いが精神病の症例っておもしろい。けど、病んでいるのと病んでいないのと、境目ってわかるもんなんっすかね。診察にまつわるエピソードは、心暖まりつつも、病気が病気だけに複雑な読後感。

 

魔法のことば

星野 道夫 著 スイッチ・パブリッシング
2003年 2400円(本体)

 故星野道夫氏が語った10回 の講演録。彼の写真と文章はいつも美しい詩のようだが、講演という形で語られた言葉は、また率直で素朴てアラスカへの愛に満ちている。同じエピソードを何度も聞く(読む)ことになるのだが、飽きない。むしろ何度も語りかけられることで、徐々に心にしみてくるものがある。ナマの講演をぜひ聞きたかった。

 

大人のための残酷童話

倉橋由美子 新潮社
1998年 476円(本体)

 子どものころに童話を読んだ記憶をたどるとわくわくどきどきの連続だったように思う。「一寸ぼうし」に「かぐや姫」それに「浦島太郎」。でも今思い出すと、へんな話ばかりだ。感傷的な描写はなく、話は支離滅裂。なのになぜあんなにひきつけられるのか。「大人のための残酷童話」は誰しも一度は読んだ有名なお伽噺を現代に甦らせた魅惑的な本である。


 

藤森照信の原・現代住宅再見

藤森照信 著 TOTO出版
2002年 2286円(本体)

明るいこと、開放的であることが現代建築の至上命題のようになっている。数ある建築探訪番組で紹介される建築作品は、どれもどこかで一度は見たことがあるような気がしてしまう。白くて明るくて広々としていて・・・。この本の住宅は、建築家たちが自分にしか出来ない表現を追い求めて建てた、いわば世に自分を問うている真剣勝負の至極の作品。一度見たら二度と忘れないれない、そんな家ばかりである。



板極道

棟方 志功 著 中公文庫
1976年 571円(本体)

 1903年に青森で生まれた著者が、徐々に油絵から板画へと移行しぐんぐん才能を発揮していった経過が、自伝として書かれている。感性の鋭さが一貫して感じられ、板画はつくるのではなく魂から生まれるのだという彼の言葉が納得できる。芸術家が貴重だった時代の雰囲気もよくわかって楽しい。



パキスタンを知るための60章

広瀬 崇子 山根 聡 小田 尚也 編著 明石書店
2000円 2003年

 日本在住のパキスタン人って何人かご存知ですか?8000人から1万人位で日本のムスリム・コミュニティーの中核となっているそうです。関西在住だとちょっとピンとこない数字です。それから「風の谷のナウシカ」のモデルとなったフンザもパキスタンにあることを初めて知りました。このように私のパキスタンに対するイメージは核・テロ・紛争などで、宗教・社会・経済をも視野に入れた多角的なものではありませんでした。グローバル化された今日では他国を理解しようと努力する事がまず第一歩です。そんな私には楽しみつつ知識を得られる格好の1冊でした。



カリスマツアコンのどうしようもなく日本人

柳沢 正著 講談社
1600円 2003年

 仕事で海外に行けるなんてうらやましいと思いつつ読み進むうち、様々なツアー客相手に旅の喜びを味わってもらおうと孤軍奮闘する著者の徹底したサービス精神に圧倒されました。様々な愛すべき日本人が巻き起こすハプニングもなかなかのもので笑わせてくれます。個人旅行と違い人間関係は大変だけど、うまくまとまると感動も人数分大きくなるというの事が印象的でした。



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