第52回(2004年3月)

安楽死のできる国

三井 美奈 著 新潮新書
2003年 本体680円

2001年世界で初めて安楽死を合法化した国、オランダ。本書の中で安楽死容認派のある医師は、安楽死の制度化はその社会が成熟しており、次の4つの条件が必要だと言う。「(1)だれもが公平に高度な治療が受けられる医療・福祉制度 (2)腐敗がなく信頼度の高い医療 (3)個人主義の徹底 (4)教育の普及」−契機となった事件から実際の合法化までわずか30年。この間に、オランダの社会と政治がいかに変化していったかが興味深い。

がんから始まる

岸本 葉子著 晶文社
2003年 1600円

 エッセイストのがん闘病記と帯にはかかれているが、闘病というにはあまりにもたんたんと書かれている。癌を患ったといっても、それも他の誰でもない自分。生きている限りは、病と向き合うより他はないよな。でも、あとがきにある「癌の日々を書くことによって過去のことにできる」というニュアンス。理論的に語られているけれど、そこの所だけはいくら読み返してもコトバが心に入ってこないです。

 

アラスカ原野行

ジョン・マクフィー著 越智道雄訳 平河出版社
1988年 2500円(本体)

 アラスカ原野の旅と原野に暮す人たちの生活を描いたノンフィクション。中でも第3部「ザ・カントリー入り」がおもしろい。ユーコン川上流のブッシュに暮す人たちは、そのあたりを「ザ・カントリー」と呼ぶ。そんな水道も電気もないところに移り住んでいる人たちがいる。彼等がブッシュ暮らしを選んだ理由は、自然を求めて、現代社会を嫌って、金鉱を探して、罠猟に憧れて、など様々だ。他人との接触を嫌い、完全に自給自足で暮し、誰にも知られずひっそりと死んでいく人もいる。そういう暮らしって素敵!

 

思うとおりに歩めばいいいのよ

ターシャ・テューダー著 食野 雅子訳 メディア・ファクトリー
2003年 1600円(本体)

 87歳の絵本画家ターシャ・テューダーさんは、独りで自分の思うとおりに生活している。広大な美しい庭を造りたくさんの動物の世話をし、食べ物や服にいたるまで、生活に必要なものを自分の手で作り出す。そしてもちろん画家としての仕事も一流。ゆったりと生活しながらたくさんの仕事をこなす彼女は、私たちの何倍もの時間があるかのよう。家事(=生活)という創造的な仕事を追いやって、私たちが得たものは何だろうか。

 

パリを食べよう

こぐれひでこ 著 東京書籍
1995年 1600円(本体)

 美食の地パリの中でもこぐれさんのお眼鏡にかなった店が紹介されているから、くいしんぼうにはたまりません。でもこの本は単なるレストラン紹介とは違って、『レストランを巡る人物観察記』といってもいいでしょう。シェフやギャルソンだけでなく、お客さんまでも俎上にのってしまう。「やせているのに大食い」だとか「かっこ悪い革ジャンの人」とか、それも似顔絵つきで・・・。パリに行ってレストラン巡りをする予定がない人も楽しめます。

 

ゴルフ場殺人事件

アガサ・クリスティー著 田村 隆一訳
早川書房 2004年760円

 昨年末から早川書房がアガサ・クリスティーの全作品の復刊を始めました。全作品を読んで大ファンだった身としては再度の読破に挑戦しています。全く今までの路線とは違うのですが、今回だけはクリスティーを紹介します。少しでも探偵小説を読んだことがあれば、エルキュール・ポワロの名前を知らない人はいないと言っても過言じゃないと思います。この作品でも人間の心理や自分の記憶、何気ない会話の中から証拠を集め最には思わぬ犯人が・・・!1920年代の作品でポワロがロンドンからフランスの田舎町に出向いて殺人事件を解決します。もちろん私はミステリー通ではありませんが、懐かしくて面白くて毎晩クリスティーを読み続けて寝不足状態です。



負け犬の遠吠え

酒井 順子 著 講談社 
2003年 1400円

 この本は立派な文化人類学である!三十代未婚子無し女は負け犬というスタンス(?)から、このわたくし達を分析しきっている。私にとっては、痛痒い所をコッソリ掻いた心地よさというかヒリヒリ感というかそんな考察の数々でした。まいりました酒井様。電車で読んだ、笑いをこらえきれなかった、カバーをかけていなかった。そんな私、周囲はさぞコワかったであろう。

 

ポルトガル〜小さな街物語

丹田 いずみ文・写真 JTB
1600円 2002年

 この本の表紙がとても気に入り手に取りました。白壁にブルーのペンキ、その前に置かれた10枚程の絵皿。そのいかにも温かみのある素朴な印象とポルトガルという国とが今、私の頭の中で重なりあっています。20年通いつづけた著者の写真は単なる風景写真ではなく、その地に暮らす人々や数々の珍しい料理の写真などあまり紹介されなかった魅力がいっぱいです。気候が温暖で海の幸に恵まれ米も豊富なヨーロッパの国なんてポルトガル以外にはなさそうです。日本との類似点の多さを改めて確認しました。


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