木立 玲子 著 集英社be文庫
2004年 本体571円
乳がん手術から4年−転移、再転移を経た著者が語る乳がんとの付き合い方。世界保健機構によって「世界最良の医療システム」と評されたフランスの医療システムや乳がん治療の実際から、仕事、家族、友人との関係等々が、率直に語られている。「病気は人生の一部ではあっても、死の一部ではないのよ。」(著者が敬愛するシャンソン歌手、ジュリエット・グレコの言葉)−深い言葉だと思う。

米原 万里著 講談社
2001年 1600円
猫犬を偏愛する様が、華麗な通訳者生活からは想像できず、著者をぐっと身近なヒトに感じさせる。ワンニャン好きなら身にしみます、万里さんの飼い主バカぶり。

極北の動物誌ウィリアム・プルーイット著 岩本正恵訳 新潮社
2002年 1700円(本体)
私の敬愛する故・星野道夫さんが、アラスカの自然への憧憬をかきたてられた本とあれば、読まないわけにはいかない。動物学者の著者が描く動物たちの営みは、科学的でありながら美しい物語のようで、どんどん引き込まれていく。そしてネズミ、ウサギ、キツネ、カリブー、ムースなどの物語を読みとおすと、貴い自然のダイナミックな循環が、そして人間の罪が明らかになるのだ。確かに名著!

神野 薫 阪急コミュニケーションズ
2003年 本体2200円
お嬢様育ちの茉莉が、風呂はもちろんトイレも水道もないアパートに住んで、こんなに精神的に自由でそして贅沢でいられたのかこの本を読んで何かわかったような気がした。他人に調子よく合わせられない人はいじめられる。茉莉は学校時代も結婚してからもいじめられ続けたそうだ。やっと一人の生活となり誰にも干渉されない生活を手にしたのだから、そこは彼女にとっては理想郷に違いない。この部屋のあの生活によって初めて彼女の耽美な作品が産み出されたに違いない。

文・絵 藤野優哉 新宿書房
2003年 本体2500円
絵描きをめざしパリに1年間留学した著者が、建築物に焦点をあててパリを「研究」したユニークな本です。猫の視点で書いた文とふんだんに挿入されている絵がいいですよね。鳥瞰図ならず猫瞰図もあって。これ一冊読むとかなりパリの街に詳しくなります。パリにグルメやファッションを期待する人には不向きだけど、建築好きには絶対おすすめのガイドです。

麻生 幾著 新潮社
1500円 2004年
SARS(重症急性呼吸器症候群)が2003年世界中を震撼させたことはまだ記憶に新しい。正体不明のウイルスの突然の猛威に立ち向かった北京の中日友好病院の記録である。SARSとの闘いはまぎれもなく命がけであり、感染者も治療にあたる医療従事者もまさしく命がけだったことを改めて認識した。くしくも先日、北京でSARS感染者が確認されたとの報道があり、また去年のような事態にならないことを祈るだけである。

湯本 香樹実 著 講談社
2003年 1400円
六年生の夏、三人の少年は一人の老人を見張り続ける。死体が見たいという理由で。生きることの厳しさとすばらしさを知るせつない一夏の物語。児童文学であるがいい意味で甘さがなく読みごたえあるよ。

下川 裕治 著 講談社文庫
2004年 619円
日本人はやっぱり忙しい。長引く不況で、バカンスも長期休暇も夢のまた夢という人が大半を占める中、アジアでのんびりなんて無理ですよね。それでもアジアでのんびりと心の洗濯をしたいと思ってる人にはうってつけの一冊です。ウィークディーは仕事に追われる私たちが週末に楽しみを持つことは必要です。3.4日でここまでバラエティーにとんだ旅が考えられるとはさすが旅のプロといったところでしょうか。
山中静夫氏の尊厳死南木 佳士 著
文春文庫 2004年 本体505円
山中静夫氏の最後の願いは、「生まれ故郷にみずから墓を作り、苦しまずに死ぬこと」。そんなささやかだけど切実な願いが叶えられるまで、本人はもちろん、彼を一番側で見つめ続けた医師も、家族もそれぞれに長い道のりを辿る。実はこの小説が書かれたのはもう10年以上も前。この間医学は確実に進歩しているのだろうが、ひとりの人間が「自然に」死を迎えることの難しさは、変わっていない気がする。