本当は、検事ほど面白い仕事はない、と言いたいところだろう。普段なかなか表に出ない検事の仕事。そうだったのか、と思うことしきり。題名の頭に「女」がついているのは、それなりの理由がある。そう、堀田力さんが本書に寄せているように、「女性検事の仕事の相手は、犯罪者だけではない。男性の上司がいる。」。著者が素晴らしいのは、常に仕事を楽しんでいるということ。読んでいて、元気になれる。

やなぎもと なお 著 東京創元社
2000年 1600円
パリでの暮らしを、気取らず・さりげなく・愉快に・まとめている。観察眼、イラスト、イラストに添えられたコメント、すべてにおいてセンスの良い人なのよ。外国暮らしを、適度な好奇心で楽しみつつ、時々立腹しつつ過ごしている様子に好感大!パリの屋根裏…憧れていたけど、夏はひどく暑いって。おしゃれなだけじゃないパリもまたよし?

辺境・近境村上 春樹 著 新潮文庫
2000年 476円(本体)
世界中どこへでもパックツアーでいけるようになった現代に、果たして「辺境」はあるのか、という著者の問題意識は新鮮だ。そういう意味でこの本には、あきらかに「僻地」といえるところ(写真を撮ると石を投げ付けられるメキシコの村!など)の旅のみならず、3日間讃岐うどんを食べ続ける旅も描かれている。旅行案内的な詳細さはないが、異文化に対する謙虚な視線が随所にあらわれていて心地よく読める。

小川 洋子 著 新潮社
2003年 本体1500円
交通事故で記憶する力を奪われてしまった老数学博士。博士は毎朝「僕の記憶は80分しかもたない」というメモを読む。自分に記憶力がないことも忘れているから。新しい記憶ができないということは、「その時までの自分で生きていく」ということ。数学という言葉を持っている博士は、たとえ記憶が出来なくてもその美しい人柄は『数式』を通してあふれ出てる。博士の語る「数式」は、まるで神聖な神々との出会いのような感動を呼び起こしてくれる。

松山 猛 著 NHK出版
2004年 1800円
アジア各地で独自の発展を遂げた喫茶文化。様々な喫茶習慣に見せられた著者の旅はまさに亜細亜道楽紀行である。中国からベトナムにまたがる旅は骨董や茶道具を求めその文化に触れ最後にはそこに関わる人たちとの出会いが生まれる。やはり最後には人とのかかわりが旅の醍醐味なんだと改めて気づかされた。それにしてもアジアの食文化の豊かさは何十年か前に日本人が便利さと引き換えに忘れ去ったもので、今盛んに言われているスローフードが生き続けているんだなとうらやましい気持ちにさせられた。

野村 進 著 講談社
2003年 1700円
精神科だけの病院(しかも救急病院)千葉県精神科医療センターを舞台に、数例の症例を交えつつ、それに携わるスタッフの奮闘が次々に繰り広げられる。入院期間を短くすることを方針としているセンターと、日本における精神科医療の現状にジレンマを感じる。ここにでてくる症例恐すぎる。自分がこんなんなったら、ちゃんと治療してくれる病院って近くにあるんやろか。

船尾 修 著 羊土社
2003年 1900円
いわゆる名所旧跡やグルメを取り上げた巷に溢れるガイドブックではない。秘境や途上国をできるだけ安全に旅するための旅行術の指南書といった感じの本です。特に異文化摩擦が引き起こす様々なトラブルを最小限に抑えるすべが満載。ちょっとリスキーではあるけれど、その分全く価値観の違う多様な世界に触れられたらそれはすごく自分にとってすばらしい人生経験になるだろうと思う。著者はフォトジャーナリストで掲載されている写真からも人々の生活が見えてくる感じがした。

黒田 恭一 著
朝日文庫 1992年 本体520円
オペラが好きで好きでたまらない、そんな思いが読む者にもしてくる1冊。オペラの世界への誘いとして、「フィガロの結婚」、「椿姫」、「カルメン」、「ばらの騎士」、「ニーベルングの指環」が紹介されているが、根底に流れるのは、オペラは知識ではない、とにかく聴いてみる、ということ。この音楽はいいな、と思うものが一つでも見つかったら、そこから世界が広がる。著者曰く−「聴け!語るな!」。