第55回(2004年8月)

読んで旅する 世界の名建築

五十嵐 太郎著
光文社新書 2004年 本体750円

建築好きの友人が世界を巡って、自分の撮ってきた写真をもとに、建築やそれを取り巻く都市、人々の生活につい語ってくれる。しかも、淡々と−。この本には、そんな空気が流れている。「建築は向こうからやって来ない。実物を見るには、現地を訪れるしかない。」足で蓄積した「名建築」の数々。住宅あり、公共建築あり、商業ビルあり。こういう旅もいいなと思う。


わたし、ガンです ある精神科医の耐病気

頼藤和寛著 文藝春秋社
2001年 660円

ガンについて、自分の病状や治療法・経過を判断し、一般的なガン患者の心情をも交えて考察しているのだが、外科も経験している精神科医らしい見解で、患者にとっても医師にとっても確信に近い所をつかんでいるように感じた。最終章あたりで、死を考えるあたり、頼藤さんの人柄なのか達観の境地なのかあまりにも飄々と書かれていてこっちの心はモヤモヤします。新聞連載されていたこの人の、悩み事相談コーナーの回答好きだったわ。

 

荒野へ

ジョン・クラカワー著 佐宗鈴夫訳
集英社 1997年 2100円

米国東海岸で裕福に育った青年が大学卒業と同時に家を出て、旅費を稼ぎながら目指したのはアラスカだった。2年後にこの青年はマッキンリー山間近の山中で遺体で発見された。自然への無謀な挑戦という非難を浴びた彼だったが、著者は自分の体験と重ねて、丁寧な調査で真実を解明していく。荒野に魅せられる者は多いが、荒野は厳しく人間を拒否する。だからこそ、挑戦したくもなるんだよなー。

 

百鬼園随筆

内田百けん著 新潮社
2002年 514円

 百けん先生の面白さというのは、どう説明したらいいのか全く難しい。と思っていたが、この本の解説を書いている川上弘美さんはさすがにするどい。百けんの名文句、「イヤダカラ、イヤダ」にまつわるエピソードから、彼の「この世をあやふやに踏み外す」面白さを描き出している。百けんもいいけど、川上弘美さんの解説を読むだけでもこの本は価値がある。ちなみにこの本の表紙は芥川龍之介が描いた「百けん先生図」。芥川氏も百けん先生の世界へと・・・。

 

安全保障の今日的課題

人間の安全保障委員会著 朝日新聞社
2003年 1900円

安全保障という単語は通常国家間の安全保障といったような意味合いで使用されていることがほとんどだと思う。しかしグローバル化された今の世界で人として生きてゆくために必要な安全の保証ということが国家という枠組みを越えて最重要になっている。人間の安全保障委員会は2001年に発足し、まず手始めとして10項目の基本的問題に取り組むことから始めている。人がすべて生存・生活・尊厳を保てる世界を構築していくための道のりは果てしなく遠いけれども真摯に立ち向かう人たちがいるという事実はおおきな希望であると思う。


自閉症という名のトンネル-不安の国の萌音

日向佑子著 福音館書店
2003年 1800円

精神病院の児童病棟(閉鎖病棟)で自閉症児を担当した新人保母の9年間と、大人になった担当児童との再会。いかにすれば、自閉症児が自己表現をし、人としての幸せを感じることが出来るのかと、彼女は奮闘する。この人の、人に対して持っている観察力や、対応力みたいなものが、読者に力を与えてくれる。そして、人間であるということをかんがえさせられる。

 

カラー版 遺跡が語るアジア

 大村 次郷著 中央公論社
 2004年 980円

18ヶ所のアジアの遺跡を各章にわけて写真と文章で一冊にまとめている。改めてアジアの遺跡の多さ多様さを再認識する。しかしこの本を読んだことで遺跡は今、環境破壊・人的破壊(紛争や盗掘など)で危機的な状態の所が多いことを思い知らされた。いま一番しなければならないことは遠い昔の遺産を今の自分たちが破壊している現状に歯止めをかけることだと思う。その一歩は少しでも多くの人がこの実態を知ることだろう。

旅のグ

グレゴリ青山著 旅行人
1996年 1456円

はじめて海外旅行にいったときの新鮮な喜び。昼間っから酒を飲むなんていう何でもないことが妙にうれしかったあの頃を思い出す。若き日の(今も若いですが)グレゴリ青山の荒削りな作風が好ましい。旅行ネタ漫画を読むなら、これからはじめてみて。爆笑必至!


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