第61回(2005年6月)

還暦のにわかおへんろ

原田 伸夫著 新風書房
1999年 1500円

四国巡礼の紀行ものはたくさんあるけれど、これは歩き遍路にもかかわらず、気追いも悲壮感もなく自然体で読みやすい。四国と遍路のよいところが凝縮されている感じ。よい巡礼ができるのは、きっと著者の人柄ゆえのだろう。八十八寺関連の小説紹介や、道程のガイドブックとしても読みでがある。

 

世にも美しい数学入門

藤原 正彦/小川 洋子 
ちくまプリマー新書 2005年 本体760円

数学者・藤原正彦さんと、小説家・小川洋子さんの2人が、数学の美しさについて語りあった本。小川洋子さんがあの「博士を愛した数式」を書いた一番のきっかけが、この藤原先生との出会いであったという。数学の美しさを、壊れものに触れるように大事に大事に語る藤原先生も素晴らしいが、その美しさを小説に見事に織り込んだ小川洋子さんの才能に改めて感心する。「博士の愛した数式」という作品を生んだ、2人の出会いに感謝したい気持ちになった。

 

英語ができない私をせめないで!

小栗左多里 著 
大和書房 2004年 本体1200円

大好きな小栗さんの著書、しかもこのタイトル。英語学習マニア(?)の私は、このタイトルを見て「読まねば!」と思った。著者の奮闘ぶりが我が身を振り返るようで、苦笑してしまう。感情を込めて発音すること自体、無理なんだってば。本や通信教育にどんなに投資しても、できないものはできないのだ。メキメキ上達法なんてあるはずなくて、「地道な努力」だけが実を結ぶのであろう・・・と悲しい悟りに至るのだけど。

 

獄窓記

山本 譲司 著
ポプラ社 2003年 1500円(税別)

 秘書給与流用事件で実刑判決を受けた元衆議院議員山本氏が刑務所で配役されたのは、「刑務所の中の掃き溜め」(!)といわれる寮内工場の指導補助だった。寮内工場とは、障害を持った人たちが働くところ。心や体に障害を持った受刑者が働いている寮内工場は、この本から察するに壮絶な毎日だが、それでもここから出たがらない人たちが多いという。「俺たち障害者は生まれながらに罰を受けてるようなもんだ。これまでの人生の中で刑務所が一番暮らしやすかったと思っているんだ。誕生会やクリスマスもあるし」という言葉に、私はただ黙って読むことしかできない。

 

モンキームーンの輝く夜に

たかの てるこ 著
幻冬社 2003年 1300円

 こんなことって世の中本当にあるんだなぁって思ってしまった。ラオスに興味があって読み始めたのに、最後は恋愛小説を読んだ感じ。ラオスの自然の豊かさや人々の素朴なやさしさが書かれていてとっても楽しい本ですがそれ以上に著者が運命の出会いをしてしまうという出来事が印象的。こんなことがあるんだから、だから旅はやめられないって思いましたよ。


恋するように旅をして

角田 光代 著
講談社文庫 2005年 本体514円

角田さんの旅は、何か目的を持って決めた場所に出かけ満足感を得る、という類のものではない。ただ「旅」の中に身をおいて、観光客など全くいない、特に美しくもない海を眺めて、ひがな一日過ごすこともあれば、迷路のような路地で道に迷い、ひたすら歩き続けたりする。自分が今どこにいるのか、何者かさえも分らなくなるような、そんな瞬間に身をおきたいがために、彼女は旅に出ているようにも思える。彼女の文章のなせる技だろうか。この本を読むと、彼女が道に迷っているその場所に自分もいて、同じ風景を見ている気になってくる。

 

自閉症だったわたしへ

ドナ・ウイリアムス著 
新潮社 2000年 781円

これまで私の持っていた自閉症の概念は、全く間違ったものだったのだと、 この本で知ることができた。自閉症独特の症状も書かれているが、自身のことを客観的にとらえ、分析までしていることに驚いた。読み進むうちに、知性溢れるドナが本当に自閉症なのか?と信じられなくなる。自閉症と言われる人たちは感じ方や、表現の仕方が少し個性的なだけで、さまざまなことに思いを巡らせるという点では多くの人たちと変わりはないのだ。


100歳の美しい脳

デヴィッド・スノウドン
株式会社DHC 1600円

 アメリカで修道女678人が参加して、アルツハイマーの大規模な研究が行われている。修道女は長期にわたってほぼ生活条件が同じであること、様々な節目での記録が残っている(写真や作文など)ことそして、何よりボランティア精神にあふれていることなどまさにアルツハイマーの研究にとって最適の集団! 死後に脳を献体することが条件というこの研究に、後世の役にたちたいという思いから実験台にされることをむしろ喜びと感じて参加いる修道女の姿勢に感動を覚える。
これだけの実験をしてもなお、脳はまだまだ分からないことだらけ。一つ得られた結論は、「文章力がない人はアルツハイマーになりやすい」こと。…こわいです。

 

香港無印美食

龍 陽一著 
角川書店 2005年 1500円

 香港の街のあちこちで「・・・茶餐廰」という看板をよく見かけます。私たちがグルメの街香港というイメージで思い浮かべるレストランとは全く別物。日本で言う大衆食堂と喫茶店が一緒になった感じですがメニューの多さと奇抜さはさすが香港といったところ。普通の香港の生活習慣や人とのふれあいを楽しみに訪れるにはもってこいの場所が餐廰のようです。今度行ったら是非一度覗いてみたい所です。


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