高野潤 著 平凡社
2006年 本体1800円
アマゾン川と、その支流の自然や住人の暮らしぶりが興味深い旅行?記。水辺にはワニ、遭遇する蛇は毒蛇、雨季と乾季で表情をかえる大河の流れ。アマゾンの自然どれもがディープでスケールが大きくて、読みごたえ満点。現地でのトラブルも、ワイルドな対処法で乗り越えてかっこいい。それにしても何でこの人は好き好んでそんなジャングルに?とふつふつと湧き上がる疑問。あ〜写真家なのか!
藤原てい 著 中公文庫
1976年 本体686円
敗戦下、3人の幼子(6才、3才、生後間もない赤ちゃん)を抱え、当時の満州新京 (現・長春)を脱出。数々の苦難を乗り越えて日本に辿り着くまでを記したもの。「引き揚げ」−その一言が意味する現実の厳しさは想像以上だ。食物や衣類、毛布といっ たモノの欠如だけではなく、他人に思いを馳せることのできなくなった剥き出しの人 間の言動が、弱い者を徹底的に打ちのめしていく世界。余談だが、その時の3才児が 今の数学者・藤原正彦先生。藤原先生の鋭い人間観察力、巧みな文章表現力等は、この母からもしっかり受け継がれている気がする。

凍沢木耕太郎 著 新潮社
2005年 1680円(税込み)
10年ぶり待望のノンフィクション。ヒマラヤに挑んだクライマー夫婦の壮絶な闘いを、生き生きとドラマティックに描いている。極限状態における心理描写が詳細で、不可能としか考えられない結末を迎える頃には、すっかりフィクションの世界に引き入れられた気分になる。これは山岳文学の歴史に残る、以前ここで紹介した『死のクレバス』に匹敵する名著だ。

本渡 章 著 東方出版社
2005年 本体1400円
「大阪生まれ大阪育ちの大阪知らず」と著者は冒頭で自身のことを皮肉って書いているが、まさしく私も自分のことだと思った。巷にあふれる大阪本の多くは大阪弁や大阪人論である。それに対し、この本は自分の足で歩いて得た知識で古代の大阪から今の大阪までを網羅して書いているのが興味深い。私もこの本片手に中之島あたりを歩いてみたくなった。

川上 弘美 著 新潮社
2005年 本体400円
古道具屋さんの店主の中野さん、アルバイトをするワタシとタケオを巡るなんでもない日々。とは言っても道具を売る人も買う人も商う人も、みんな少しヘンで、ヘンが普通の日常が営まれている。こんな古道具屋さんで私もアルバイトをして、こっそりと別の日常をみたくなった。
朱川湊人 著 角川書店
2005年 1400円
過去を視透することの出来る姉と、姉をいたわりながらも頼りにする妹。周辺で起こる事件を、二人はその不思議な力で次々と解決してゆく。一昔前の町の情景や、人々の様子が映像を見ているかのように感じられる短編集。よくもまあこれだけの内容を短編に仕上げられるものだと、私が読んだ朱川作品はどれも“ハズレ”がない。次の単行本化が待てず、朱川作品掲載の文芸雑誌に手が伸びるや、きっと。
米原万里 著 集英社新書
2005年 本体680円
誰かを何とか笑わせたい。自分もクスッと笑いたい。これは私たち誰もが持っている願望ではないだろうか。この本は、古今東西の小噺を紹介してなぜ笑えるのかを解剖している。さらに自らの腕を磨きたい人のために、小噺を作る小問題もある。何度読んでも笑える傑作小噺満載。

もう消費すら快楽じゃない彼女へ田口ランディ 著 幻冬舎文庫
2002年 本体571円
世の中の事象をちょっと違った角度から読み解くのは著者の得意なところ。俎上にあがるのは有名人だけではなく市井の人々も多い。ゴミ部屋にすむホステス、一家5人を惨殺する男、ビルの隙間に入っている女、地下通路で詩集を売る女など、著者はなぜかくにも不思議な人たちと出会うのだろう。これらの人たちをすっと受け入れられるのは、試しにコインロッカーに入ってみたという著者ならでは。

広谷鏡子 著 ちくま文庫
2003年 本体780円
「好き好き好き好き文楽!」という著者の思いが前面に出すぎていて、やや食傷気味になるきらいはある。が、そのぶん生身の文楽の世界が垣間見えて、読み終わった時、著者の「文楽病」がすっかり伝染している可能性があるので要注意(?)。人形遣いによって人形というただの「木偶」に魂が宿る瞬間、そして、太夫、三味線、人形の「三業」が一体となったときの「奇跡」を味わいたくてたまらなくなる。
小林章夫 著 日本放送出版協会
2005年 本体870円
イギリスの田舎町に一年間住んだ著者が普通のイギリス人の生活・考え方・世界観などを日常の生活の中からいろいろなエピソードをあげながら書いている。イギリスの古きよき時代を守ることとアメリカに追随していることの両面を持っているイギリス。普段着ののイギリスとイギリス人の生活を通して書かれた読みやすく書かれた文化論である。