ティム・ゲナール 著 橘明美 訳 ソフトバンククリエイティブ
2005年 1500円
三歳で母親に捨てられ、その後父親に瀕死の虐待をうける。児童保護施設や、少年院を転々とし、脱走を果たしたティムは、パリの街で強盗・男娼と社会の底辺を這いずりながらも、更正をはたす。ティム自身が持つパワーと彼を取り巻く人々に、生きるということを考えさせられ、やる気がでてくる。って単純ですかね?私。
沢木耕太郎著 幻冬舎文庫
2006年 本体533円
死の迫る床に伏せる父親とその傍らで父を見守る息子−。著者の目から見た父親の人生とその父に対する思いを綴ったこの本は、「現実」と「回想」を静かに行き来しながら、読む者をぐいぐいとその中に引き込んでいく。自分は死ぬ間際に人生を振り返って何を思うだろう。「無名」であることを信条として生きたように思える著者の父が病床でもらした、「何も・・・しなかった」、「何も・・・できなかった」という言葉が胸に残る。

椿山課長の七日間浅田次郎 著 朝日文庫
2005年 600円(本体)
帯には「涙と笑いの感動巨編」とある。さほど感動はしないが、確かに面白い。義理人情の男たち、一途な女性、大人びた子ども、実直に生きる老人など、魅力的な脇役をうまく配置している。突然死した中年男性が、職場や家族への責任を全うしたいという思いで、現世に帰ることを強く願うのだが、残された者たちはそれなりにうまくやっていっているもので。そんなもんだよね、人生って。
角田 光代著 アクセス パブリッシング
2005年 1500円
小説は何冊か読んでいて、好きな作家ではあったが特別印象深いわけではなかった。この本に出会って、作者がこんなにも旅好きであることと、旅のスタイルにすごく親近感がもてて、何だか自分も同じ旅の空間にいるような気になれた。旅は刹那的で同じ場所空間にいても人それぞれ感じ方が違うし、同じ場所を再訪しても印象は違う。まさしく旅は世界中に同じものが ない私だけのものなんだということに気づいて、またまた私の「旅したい病」がむくむくと頭をもたげてきた。
シオドーラ・クローバー作
岩波書店 2800円(税別)
イシは、古代からの「野生」の生活を守っていたが、白人に捕まってしまって、博物館(!)で残りの人生を過ごした最後のインディアン。
この本は子ども時代のイシの生活を記録で、彼らの豊かな精神生活が生き生きと描かれている。ヤヒ族最後の1人になってしまったイシの心の中を思うと、涙せずにはいられない。

ぽっかり穴のあいた胸で考えた〜わたしの乳がん体験記高橋フミコ 著 バジリコ株式会社
2006年 1300円(本体)
この本は、「乳がん体験記」としては、かなり異色ではないかと思う。しこりを発見してから6年も放置していて、とうとう腫瘍が崩れて胸に穴があいてしまったという。著者が乳がんに特に恐怖も感じず、ある意味無関心に生活していたのには理由があった(ここには書きません)。こんな著者と乳がんとの付き合いは、「悲劇」とか「闘病」という言葉ではくくれない、自分の気持ちと生き方をとことん見つめて行く過程だった。その時々の気持ちがありのままに表現されていて、とても好感がもてる。

有吉佐和子著 新潮文庫
1974年 本体466円
芸の道を究めようとする文楽の三味線弾きの男とそんな男を愛した女の物語。著者の筆のなすところだろう、女の一生の物語としてももちろん読み応え十分だが、特に舞台上での三味線弾きと大夫の掛け合いの場面をはじめ、全編通じて描かれる男の芸にかける姿は読んでいて息がつまりそうになる。そんなはずはないのに、男の弾く一の糸の響きが聴こえてくるような気になる。
堀江 義人著 平凡社
2006年 2400円
改めて地図を見てみるとチベットは中国の一部でありながら、ネパール・インドとも国境を接している。様々な国の思惑にもさらされている。そして中国の中心都市の多くは沿岸部にあり、そこから見るとまさしく秘境である。私たちのチベットに対するイメージはチベット仏教・五体投地など限定的であるがこの本を読んで、改めて民族・宗教の違いからくる問題の難しさを再認識した。豊富なカラー写真からもチベットの「今」が鮮明に見えてくる。