第70回(2006年12月)

死体闇取引

アニー・チェイニー著 早川書房
2006年 1600円

 アメリカで行われている死体商売の実話。死体は、医療機器の販売促進研修に材料として使われたり、病院での治療用部品として再利用されたりと、引くてあまた。献体を病院が横流し、葬儀社が遺体を部分的に切り取って闇取引。中でも、宅配便を使ってやりとりされてるってくだり、自分宛の荷物がそんな生物と一緒に運ばれてたらどうよ。日本では有り得ないらしいけど、なんせ闇取引だからねぇ。


ナスカ 砂の王国
〜地上絵の謎を追った マリア・ライヘの生涯

楠田枝里子著 文春文庫
2006年 本体657円

 1903年ドイツに生まれたマリア・ライヘ。彼女が遥かかなたのペルーでいかに地上絵と出会い、その研究と保存に力を尽くしたかが綴られている。マリア38歳、地上絵の解明という命題と出会う。「それは、私の運命でした。私はそのために生まれてきたのだと、直感したのです」−時代背景、異国人、お金も人脈もない、ペルーという国の内情・・・困難な状況の数々が、かえって彼女の地上絵に対する愛情と熱意を澄んだものにしていった気がする。真似できない。でも、信念に生きた彼女がうらやましい。


八十日間世界一周

ジュール・ヴェルヌ 著 田辺貞之助 訳 創元SF文庫
1976年 450円

 イギリスの紳士が仲間を全財産をかける賭けをして、80日間で世界一周することに。しかし当時は1870年代。飛行機はなく、汽船や汽車を使う旅だ。「下男」や刑事など個性豊かな脇役が様々な事件を起こして旅程が遅れる度に、やきもきさせられる。そして主人公フォッグ氏の知性とイギリス紳士的(?)冷静沈着さが一層際立つ。何度読んでもわくわくするこんな話を1873年に書けるのは、天才ヴェルヌならでは。旅好きにぜったいお薦めの名作SFだよ。 

 

天才青山二郎の眼力

白洲 信哉 編 新潮社
2006年 1400円(本体)

 美しいものに取り付かれ、一生を美の発見に費やした青山二郎が、実際はどんなものに美を見出していたのかこの本は教えてくれる。
 これがあの「自動電話函」、終の棲家「ビラ・ビアンカ」はこんな感じだったのかと・・・。白洲正子さんの「今、なぜ青山二郎なのか」を読んで、彼の「目」に興味持った方に特にお勧めです。



誰も知らなかったインド人の秘密

パヴァン・K・ヴァルマ 著 村田 美子訳 東洋経済新報社
2006年 2000円

 タイトルのインパクトと装丁の色が派手なので思わず手にとって読み始めたところ、なかなか硬派で読み応えがあった。神秘の国だったインドが近年一転してIT立国として急成長している。その動力であるインド人をインド人である著者が冷静な目で分析ている。中には結構面白い視点ながら、なるほどとうなずくことが多くあっておもしろい。特に印象に残ったのは、インド人は英語を重視したあまりインドの言語が衰退しているという。昨今の日本でも同じような傾向にあるのかなと思ったりもした。


まだ見ぬホテルへ 

稲葉なおと 著 日本経済新聞社
1998年 1600円(本体)

 ホテルで過ごす時間で、旅の印象は変わることがある。この本は、建築家である著者が選んだ25のホテルで過ごした思い出を紹介している。建築家の本ということで、建築のディテールを期待して読むと少し物足りないかもしれないが、ディテールがないだけにかえって「あこがれ」の気持ちが強くなる。
 
私の「まだ見ぬホテルへ」行ってみたいと思う。


沖で待つ

絲山秋子 著 文芸春秋
2006年952円

 芥川賞受賞作品にしてはアクも強くなく、設定に無理もなく。だからといって平凡に終わらない表現力。いいわ!同期の友人の死にまつわる総合職・女子の感情の起伏やおかれている状況が有り得るーって、しみますことよ。あ、同世代だからよけいに感じるところあるのかなあ。


アメリカよ!あめりかよ!

落合信彦 著 集英社文庫
1991年 400円

 今でこそ留学は一般化してきたが、1960年前後には、貧困の中で夜間高校を卒業して奨学金を得てアメリカに留学するということ自体、稀有なことだった。費用をかけずに英語力を身につけ渡航して獲得した学生生活、さらにオイルビジネスでの仕事ぶりは、まさにアメリカンドリームだ。小説にも勝るドラマティックな展開で、ありえないと思いつつ心が躍る。


欧米メディア・知日派の日本論

小林雅一 著 光文社
2006年 952円

 長い不況の末、経済的に少し明るさが見えてきたといわれるがまだまだ実感としては感じられない人が多数だと思う。この間、私たちの国はどのように変化してきたのだろうか?かつての「経済大国日本」はいま世界からどう見られているのだろうか?この本の中には日本の報道とは違った見方も多数ある。また、同じアメリカといっても一枚岩ではない。この中で紹介された人たちの意見を読むことで私たちは世界を見る目が少し広がるのではないだろうか。


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