第72回(2007年4月)

私の夫はマサイ戦士

永松真紀 著 新潮社 
2006年 1300円  

 書名どおり、マサイの戦士と結婚した、日本人女性のルポもの。この著者、行動力と決断の人である。変な言い方かもしれないが、無限大の価値観を持つ女とでも言いましょうか。いくらマサイの男が魅力的だからといって、惚れたからといって、嫁いじゃうかなあ。確かにマサイの人々の伝統的な暮らしぶりは、人として一番シンプルだし、地球に生きる生物としてもまっとうだと思うけど。困ったり悩んだりしても、自分で解決の道を見つけ出してゆくことが出来る、そんな人だからこそマサイの世界に暮らせるのかなあ。


犬が星見た−ロシア旅行

武田 百合子 著 中公文庫 
1982年 本体724円 

 著者が夫武田泰淳氏とその友人とで参加した、「69年白夜祭とシルクロードの旅」の 道中日記とでもいうもの。目にする風景、出会う人物、様々な人と交わした会話・・・ そのどれもが細かで的確に、かつ、いきいきと描写されており、文章から著者の旺盛 な好奇心とのびやかな感性が伺える。思わず笑ってしまう場面もしばしば。文体は全 く違うのに、途中、椎名誠氏の「ロシアにおけるニタリノフの便座について」を思い 出してしまった。ロングセラーになるのもうなずける。

 

姥勝手

田辺 聖子 著 新潮文庫 
1996年 460円

 田辺聖子さんが大人気と聞いて久しぶりに読みたくなった。図書館に行くとこれしかなく仕方なく借りてきたが、読み出すと止まらない!80歳で一人暮らしを謳歌している歌子さんの日常の話というと退屈そうだが、さにあらん。おしゃれで、堂々としていてお一人様をとても楽しんでいる。そして意地悪が入っているところが彼女の魅力! しばらくおせいさんワールドを探求しようと思う。

 

前略 団塊の旅行世代様

一歩 歩 著 文芸社 
2006年 1200円

 タイトル面白そうで手には取ったけれど。読んだ私には団塊 の世代をタイトルにした必然性は全く感じられなかった。著者の経歴も不明だし内容もただの自分の旅行話みたい。うまく時勢に乗ったタイトルで内容自体も話としては結構いろんな人が登場しておもしろかったけれど。でもこれを読んで旅行がしたいって思う団塊の世代の人がいるかな?と思ってしまった。


冠婚葬祭のひみつ 

齋藤 美奈子 著 岩波新書 
2006年 740円

 冠婚葬祭というと、昔からの決まりがあってめんどくさそうだが、実はここ100年程度の「伝統」らしい。その前は結婚といえば人前結婚、葬式は自然葬で、どちらも宗教は絡んでいない。商売人の才覚ででこのような形式が作られてきた。バレンタインのチョコと大差ないのだ。ちなみに、「冠婚葬祭」とは「結婚」と「葬式」だけではない。「元服(冠)」と「先祖の祭祀(祭)」を含めて人生の大切なイベントを表す、とのことだ。

 

もったいないじいさん

今井 美沙子 著 作品社
2005年 1800円

 ノンフィクション作家の舅のお話。まさにノンフィクション!自分家のことを書いているのだ。もったいないじいさんは、よく言えばエコロジーの人。ティーバッグを干しておいて何度も使ったり部屋の暖房をつけずにものすごい厚着したり、お金のためじゃないのよ、物質としてもったいないからなの。私自身似た様なことをしているせいか、次々繰り広げられる倹約生活におもわずニヤリ。接着剤で接いだ食器を使っているかと思えば、同じ食器を未使用のまましまいこんでいたりと、ちぐはぐな行いも憎めないじいさんだと。家族の皆さんは翻弄されていたようでしたが、私の倹約もほどほどにします。


世界あちこちゆかいな家めぐり

小松 義夫 文・写真 西山晶 絵 福音館 
1997年 1300円 

 書名のとおり、著者が世界各地の風変わりな家を訪ねて、写真に簡単な説明をつけて紹介している。それぞれの家の中や住んでいる家族の生活の様子も描かれているので、ただの建築物の紹介というよりも文化人類学の趣がある。岩山をくりぬいた家や円形の集合住宅など奇抜な形状が、気候や生活に見合って工夫されていることがよくわかり、とてもおもしろい。

インドの時代

豊かさと苦悩の幕開け

中島 岳志著 新潮社
2006年 1500円
 
 日本は今、政界も財界もこぞって空前のインドブーム。テレビや雑誌の特集もブームにあやかって目にしない日がないほど 。しかし、農村の相変わらずの貧しさもカースト制度も宗教対 立も消えてなくなったわけではなく厳然と存在する。インドのイメージは今までの日本ではステレオタイプで一面的だった。 今の急成長がもたらすものと古くからの歴史観宗教観をも含め て見てゆく必要性を改めて感じた。

ウーマンアローン

廣川 まさき 著 集英社
2004年 1500円

 ユーコン川をたった一人カヌーで下る。この手の冒険物を読むと、自分の考え方や感じ方の変化に気が付く。何時からか自分の中におくびょうムシが住み着いたようだ。これまでの私なら羨ましがっていただけだろうに、近頃はこんな危ないことして無事に帰れるのかと心配が先に立つ。それでも、いつのまにか共に川くだりを楽しませてもらえた。著者の、感受性と表現力そして何より自分を信じる力に導かれたのだろう。第二回開高健ノンフィクション賞受賞。


この国で女であるということ

島崎 今日子 著 ちくま文庫
2006年 本体780円 

 「アエラ」に連載されていた「現代の肖像」から20人分を抜粋したもの。女優、小説 家など様々な人物へのインタビューをもとに書かれたそれらの記事は、連載当時から 強く引かれるものがあったが、今回この本を読んでそれがなぜか分かった気がする。 「この国で女として生きるということはどういうことか−私は、その答えが切実に知りたいのだと思う。」その彼女の思いが、登場人物たちの強烈な個性、生き方とあい まって、単なるインタビュー記事とは違う、ほかにはない世界を作り上げている。

 


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