第75回(2007年10月)

まらそんノススメ

田渕 由美子 著 集英社
2006年 本体1100円  

 田渕さんと言えば、思春期に“大人っぽいなー“って思って読んだ漫画の作家さんだ!けど、彼女もすっかりおばさんっぽくなっちゃって。もちろん読者の方もっすが。馴染みやすく、私も走れる?ってやる気がフツフツと沸き上がっちゃう、求心力満点のマラソン本。もちろんマラソンのノウハウ本としても一級品。


あしたはアルプスを歩こう

角田 光代 著 講談社文庫 
2007年 本体400円 

 イタリアの山でトレッキングに挑戦した角田さんの旅行記。仕事の依頼がきて、角田さんが最初に思ったことは、「イタリアに山ってあるのか?」−。“えっ!?”と思うが、自分も「イタリア」から連想されるものを考えてみる。街並み、芸術、教会、食、ワイン、古代ローマ、人生を楽しむ人々、イタリア流(?)の時間感覚・・・。確かに「山」はピンとこない。作家の観察眼を通して、これまでとは違うイタリアが垣間見えるとともに、同行したイタリア人ガイドさんのちょっとしたエピソードの数々がいい。やっぱり、人生を大切にしているんだよなあ。

 

猫楠〜南方熊楠の生涯

水木しげる 角川ソフィア文庫
1996年 本体660円

 慶応3年に和歌山で生まれた生物学者、南方熊楠に興味があった。彼は明治時代アメリカとイギリスに遊学し、大英博物館に働いたこともある。語学に堪能でなんと19カ国語を操ったと言われる。だからと言って西洋カブレではない。日本の自然が好きで、日本人であり続けた人だ。和歌山に熊野古道やたくさんの手付かずの自然が残っているのは彼の功績によるところが大きいと言う。学者なのに霊や神秘など目に見えない証明できないものを尊んだところも面白い。私生活では大変突飛な行動で周りは困ったと思うが、なぜか憎めないお茶目な人だ。

 

ぼくは在日関西人

趙 博 著 解放出版社
2003年 本体1600円

 パワフルな著者の文章に圧倒されながら、笑ってみたり、考えてみたり・・・。在日関西人の目から見た日本と日本人の姿が著者の生い立ちや体験の中から描かれている。日本では自らを掘り下げて考えずに、国際化やグローバリゼーションなどという言葉があまりにも安易に語られていることに改めて危機感を持つ。


ミサコ、三十八歳

群 ようこ 著 ハルキ文庫
2007年 本体476円

 シングルで管理職のミサコ。マジメでちょっと不器用なところがいい。無能な男子バイトを叱ったり、独居の父親を気にかけるが一緒に過ごすのは気詰まりだったり、結婚しろと言われなくなったのを少し寂しく思ったり、職場や家族のことで日々悩んだりストレス解消したり。同世代の自分としては、思い当たる節が多くあって微笑んだり苦笑したりしつつ軽快に読めた。


ネイティブ・アメリカンの教え

写真:エドワード・S・カーティス 訳:井上篤夫 ランダムハウス講談社
2007年 本体880円

 「はじめに」によると、カーティスという人は、先住民、ネイティブ・アメリカンと政府の攻防が最終局面を迎えていた時代に、「ネイティブ・アメリカンという消えゆく文化の目撃者」として長年にわたり各地を旅し、各部族の歴史、伝承、言語などを網羅する、一民族のアーカイブを完成させたという。この本は、カーティスの撮影したネイティブ・アメリカンの写真と、各部族の文化、信仰、教えを説く彼らの肉声で構成されている。強い意思とこちらの心を見透かすようなまっすぐな視線。恐らく代々口頭で受け継がれてきたのであろう、その深遠な言葉の数々に驚く。

 

ツレがウツになりまして。

細川 貂々 著 幻冬舎
2006年 本体1100円

 いつのまにか「ウツ」は大変ポピュラーな病気になったみたい。私のまわりにも複数いるし、自分も時々それっぽい時もあるから興味深く読んだ。この本(漫画)は、サラリーマンだった夫がウツになっていく様子からはじまり快復していくまでが漫画家の妻の視線でユーモアたっぷりに描かれている。特に、辞表を書くのに8時間もかかってしまったり、曜日によってネクタイや入浴剤をきっちり決めているような、夫さんのこだわりドコロが具体的でおもしろい。

 

 

留学生が愛した国・日本 ー スリランカ留学生の日本体験記 

J.A.T.D.にしゃんた著 現代書館
2002年 本体1900円

 本を一冊日本語で書くなんて滞在が長いとはいえたいしたものだと思い手に取り読み始めた。文章は的確で読みやすくて驚きました。海外から来た留学生に日本或いは日本人の姿がこんな風に写っているのかと気がついたことも多くあり、日本の国際理解は実は日本人的発想から行なわれているなという思いに至った。

 

奇跡の6日間

アーロン・ラルストン 著 小学館
2005年 本体2000円  

 アメリカ南西部でのキャニオニングで事故にあい、狭い渓谷で右手首を岩に挟まれたまま六日間を過ごした青年の実話。渇きと暑さと苛立ち、なんと臨場感溢れるリアルな本なんだ!この青年の冷静さが、最終的に自らの命を救うのだが、助かるための決断とその作業は常人には絶対ムリだってば。ちゅうか、ご本人もかなりヤバイ心理状態で下した最終判断は、冷静さと極限が裏腹で、よく助かったことだわ。スッゴク疲労感の残る冒険ものをご希望のかたにおすすめ。

 


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