奥野 修二 著 文藝春秋
2006年 本体1571円
約40年前に高校の同級生を殺害し首をナイフで切り落とすという少年事件が起きていた。被害者の遺族は今なお事件の中で生きている。すでに八十代の母親は、事件後一年半の記憶が全く無く、加害少年が弁護士として社会復帰していることも恐ろしい事実。事件当時の詳細はもとより、遺族に焦点をあてた、事件後から現在に至るまでのルポルタージュ。少年法は改正されたけど、被害者や犯罪に巻き込まれてしまった人々を思うとやりきれない。
停電の夜に ジュンパ・ラヒリ著 新潮文庫
2003年 本体590円
アメリカ在住のインド出身の女性作家の短編集。「停電の夜に」のほかに8編の作品が収められている。全作品に故郷から遠く離れ、宗教も習慣も全く異なる、アメリカで生活するインドの人たちの、寄る辺なさや悲しさが流れている。誰からも理解されず、一人ぽっちで放り出されてしまったような・・・。
最近小説をじっくりと読まなくなった私ですが、久しぶりに琴線に触れる小説に出会いました。秋の夜長にお勧めです。
東 佐智代 著 日高 充子 著
山と渓谷社
2005年 本体1600円
「いつかは海外に住みたい」と漠然と思っている人は多いけど
実現するとなるとなかなか難しいのが現実。海外定住のための
豊富なデータと読み物としての面白さがミックスされているの
で「いつかは海外に住みたい」と思っている人にはピッタリ。日本ではポルトガルの情報は少ないので人々の日常生活や歴史
・文化などが書かれていて興味深い。
中島 美代子 著 集英社
2007年 本体1400円
故中島らもの妻美代子の書いた回想録。1970年に出会ってから結婚そしてその後の特異な生活へと続いていく二人の関係は、当初から破滅への道を歩んでいたように見える。ドラッグとセックスと経済的破綻・・・。あの時代の雰囲気が伝わってくる。当人はこれも一つの愛の形であるというのだが、もっと自分を大切にしていいよ、美代子さん!と思わずにいられない。
アーサー・ビナード著 集英社文庫
2006年 本体495円
著者はアメリカ生まれの詩人。今では英語よりも日本語で詩を書くことのほうが多い という。原稿用紙にすれば2〜3枚の、ちょっとした日常のエピソードの数々。なの に、英語と日本語という2種のコトバの世界を自由に行き来できる稀有な才能と豊か な感受性に裏付けられた著者の文章は、今まで気づかなかった「日本」を感じさせて くれる。余談だが、著者は「落語」ファンでもあるらしい。どうりで毎回、話に「オチ」がついているわけです。いやあ、別の本も読んでみたくなりました。
宮沢 賢治 著 川原 真由美 画 港の人
2005年 本体1500円
宮沢賢治が親しい友人や家族に宛てて書いた書簡を集めて編集したもの。彼の小説に流れる自然に対する慈しみや、ある種の残酷さ、哀しみなどが、手紙の中では生の言葉でストレートに語られている。作品にちりばめられている美しい言葉は、こんな悩みや苦しみの中で生み出されていたんだなあとしみじみ納得しつつ、彼の作品を再び読みたくなった。
目莞 ゆみ 著 フィルムアート
社
2005年 本体2000円
少し前ですが教育水準世界一ということでフィンランドが日本の新聞やテレビで話題になりました。この本にはフィンランド人の国民性や日常生活が写真とともに詳しく書かれています。なぜここまで国民が高学歴で、国がレベルの高い福祉を実現できるのかを知るには格好の一冊です。フィンランドの社会システムは経済至上主義に走った末の閉塞感に満ちた今の日本社会とは対極にあるように私には思えてなりません。
米原 万里 著 毎日新聞社
2007年 本体2200円
週刊誌サンデー毎日の連載を全掲載した単行本。現代社会情勢をばっさりと切り捨てる辛口で痛快な発明あり、愛猫・愛犬家らしいワンニャンがらみの発明あり。私一番のお気に入りは、語彙の少ない若者を嘆いてバウリンガルの類似品でガキリンガル。発明装置の実用性はさておき、世の中をよく観察していると感心しつつ、全く同感だ!と感じることが多い。
路上観察で歩くパリ 稲葉 宏爾 著 角川書店
2005年 本体886円
パリ在住20年以上の著者によるパリ案内。パリって、工事現場もゴミ箱も、落書きさえも、どこかセンスが感じられる不思議な街だ。散歩するだけでも心が弾む。「トマソン」が好きな著者の視点は、普通のパリ案内では物足りない人にお勧め。