小林紀晴 著 文藝春秋
2007年 1905円
9.11のニュヨークと帰省先の茅野。写真家の紡ぎ出す風景にはそれぞれの地で生きる命がある。誰もがとどまることなく、人も街も変化を続けている。ニューヨークに住み続ける人、故郷に引き上げる友人。茅野で余命を生きる父。切なさに小林紀晴極まれりと、久々に感じた。大都会ニューヨークの暮らしも、長野県の茅野のくらしもどの人の人生もドラマティックだ。
フリーダ・カーロのざわめき 森村泰昌・藤森照信 芸術新潮編集部
2007年 1500円(税別)
フリーダカーロの絵は、一度見たら忘れられない。痛くて悲しくて、絵の中からフリーだの叫びが聞こえてくる。そんな絵を描いたフリーダとは、いったいどんな人生を歩んだのだろうか・・・。この本は、フリーダに扮した作品を発表している森村さんならではの視点で、その波乱万丈の人生を辿っている。
小峰 隆夫/日本経済研究センター編
日本経済新聞社 2007年 1800円
人口を軸として2050年までの長期の世界経済を予想しているのが非常にユニークでおもしろい。今、世界経済はアメリカのサブプライム問題に対する不安とパニックから急激な悪化を見せている。世界の今の現実と2050年の予測とのあまりのギャップに驚くとともに、日本だけを見たとき、今の少子化或いは介護制度が今後どのように影響するのかなど非常に興味深い面もある。
中村 うさぎ著
文春文庫 2007年 495円(本体)
ブランドやホストなど数々の嗜癖体験を赤裸々に書いてきた著者。この本は、その時々に書いたエッセイをまとめたもの。テーマにより4つの章にわけられているが、やはり「浪費地獄の章」と「借金地獄の章」が真骨頂。いつもながら、「バカな自分」を客観的に分析しつつ自己否定しないところがいいんだよねー。
土本亜理子 著 文春文庫
2007年 本体629円
南房総の小さな町にある「花の谷クリニック」。通常の内科の診療所と、緩和ケアと
ショートステイの為の入院病棟、在宅ケアの3つを、一人の女性医師(院長)を中心
に20数名のスタッフが担う。「病院」というよりも、日常生活の延長線上にあって、
患者やその家族、地域の人々がほっとできる空間。「ホスピス」は最期を過ごす場、という考え方になぜか違和感があったが、その理由が少し分かった気がする。「終末期の人は死を待つ人」ではなく、死ぬまで生きている−その当たり前のことが今の医
療では忘れられていないだろうか。こうした場所が身近にもっと増えてくれることを祈る。
ソマリー・マム著 高梨 ゆうり訳
文芸春秋社 2006年 1524円
カンボジアで少数民族の子として生まれた著者が人権活動家として世界的に認知されるに至るまでの自伝である。自らも売春宿に売られ地獄の苦しみを体験する。その精神的な苦痛に今も苦しみながらも女性救援組織をつくる。そこでの活動を通じてひとりでも助けたいという著者の気迫が読み手に伝わってくる。
北尾トロ 著 文藝春秋
2007年 1048円
世の中には裁判の傍聴マニアという人種がいるんだそうだ。なるほど、この本を読むと一度くらいは傍聴してみる価値はあるかもと、裁判に興味を持ってしまう。 著者によると、裁判にも充実した人間味溢れ泣けるものと、時間の無駄と感じるものがあるようで。その裁判を味わうコツと、人間劇場が事例をあげて日記風にまとめられている。裁判員制度は責任重大で困るけど、傍聴ならちょっと経験したいかも。
大大阪モダン建築 橋爪紳也 青幻舎
2007年 1600円(税別)
古い建築物をどんどんと壊してしまった大阪だが、中之島・北浜界隈はなぜか明治・大正・昭和初期の名建築がまとまって残っている。有名なところでは市民の寄付によって建てられた「中央公会堂」「府立中之島図書館」。どちらも現役で建物の中も素晴らしい。その他にも生駒ビルディングや新井ビル、高麗橋野村ビルディング、北浜レトロなど、小ぶりで品のある建築もたくさんある。とはいえ古い建物は壊してしまったらそれまでだ。今ならまだ間に合う。ぜひこの本を手にしてこの界隈をのんびりと歩いてみてほしい。
アニック・カイテジ 著 浅田 仁子 訳 アスコム
2007年 1600円
今からたった13年前、ルワンダのジェノサイドで被害に遭いながらも命からがら生き延びた女性の半生記。民族紛争には様々な背景があるのだが、どうしてこんな酷いことが行われるのかと、人間の狂気に吐き気をかんじる。やりきれないのは、昨日までの同僚や近所の人が隠れ住んでいる家族を密告して売ったり、凶器を持って襲い掛かってくること。ニュースで報じられる民族紛争がこんなに恐ろしいことだったとは。語り継ぐべき本だ。