第84回(2009年3月)

有頂天家族

森見 登美彦 著 幻冬舎
2007年 1500円 

 なんのこっちゃである、舞台設定も登場キャラクターも。京都を舞台に繰り広げられる、生きることの喜びと悲しみがテーマの小説なのかなあと読んだのだが、主人公は狸の家族。それから老いぼれ天狗と天狗力を身につけた若い人間の女。そんな奇想天外の設定にもかかわらず、というよりも奇想天外だからこそ癖になる奥深さ。言葉を操ることを愉しみ、底辺に流れる主題を妄想でケムにまく。この人天才作家だよ!私自身の日常も視点を変えれば面白くなるかなとおもわせてくれました。



時が滲む朝



楊 逸 著 文藝春秋社
2008年 1238円

 天安門事件はまだ鮮烈に私の記憶の中にある。中国の民主化を求めて全土から集まった知識人と学生たちの姿がこの作品を読むうちに鮮明に脳裏に浮かんできた。主人公浩遠の民主化運動にのめりこんだ青春時代そして挫折。その後日本人女性と結婚して日本での生活を始める。かつての民主化運動の同志たちは海外に逃亡した者、経済発展の時流に乗る者、農民工として貧しい生活を送る者と様々だがそれぞれに挫折の後の生き方の中で何を考え何を目指して生きているのだろうか。


いまを生きる言葉「森のイスキア」より

佐藤 初女 著講談社+α文庫
2007年 本体648円

 青森県の岩木山麓の広々とした土地に「森のイスキア」という場をつくり、救いや癒しを求める人々を手作り料理でもてなしている著者。キリスト者らしく「奉仕」、「感謝」、「祈り」などがベースにあるあたりはやや違和感をおぼえるが、「お米が息ができるようにと思っておむすびを握る」なんて、素敵な発想。日々適当な食生活を送っている私に、「食事は人を変える」と言う著者の言葉が響いた。

世界のじゃんけん

田中 ひろし 著 今人舎
2007年 1500円

 何かを決めるとき「じゃんけん」は欠かせないアイテムのひとつです。おとなもこどもも日常でよく使っていますね。では「じゃんけん」は何時ごろどこから伝わってきたのかなんて考えたことありますか?江戸時代に中国から長崎に伝来し上方から江戸に伝わったそうです。また世界中の「じゃんけん」を集めているのもこの本のさらにおもしろいところ。普段何気なく使っている「じゃんけん」だけど掘り下げてみるとおもしろいことがいろいろわかって楽しめる一冊。


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