服部文祥 著 みすず書房
2006年 ¥2400
山行きてー。夏山、フリークライミング、冬山様々な山行を記録したものがこの本。装備を最小限におさえ、登山道を行かず藪をこぐ、食糧は道中で魚釣り。なんと原始的でワイルド。そりゃあ人知の及ばぬバックカントリーは魅力でいっぱいでしょう。何度も命の危機と肉薄しているのに、君は行くのか!いや〜私は普通の登山でいいんですけれど。
町長選挙奥田英朗 著 文春文庫
2009年 505円(税別)
以前紹介した精神科医・伊良部シリーズ第3弾。伊良部先生はあいかわらずだが、今回は患者さんが面白い。「ホリエモン」を連想させる「アンポンマン」は「平仮名アルツハイマー」になって通院中。たとえば「み」は「MI」としか書けなくなってしまう…。伊良部幼稚園に通うようになって快方に向かっていくが、最近、頓に文字が書けなくなってきた私には人ごととは思えなかった。他にも「ナベツネ」を思わせる「ナベマン」も風刺が効いている。

邂逅の森熊谷 達也 著 文春文庫
2006年 本体657円
直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した作品。大正から昭和にかけて東北地方でマタギとして生きた男の人生を描く長編小説。自然の恵みを糧としながら生きていくマタギの生活には、自然への感謝が満ちている。何の迷いもなくマタギとなり、途中やむなく違う仕事につくが、やはりマタギの血が騒ぎ・・・、これって「天職」なんだよなー。マッチョぶりが、またなんとも言えずかっこいい。長編だけど、ノンストップで読んでしまいたくなるくらい引き込まれる人生ドラマだ。
予想どおりに不合理―行動経済学が明かすあなたがそれを選ぶわけ
ダン・アリエリー 著 熊谷 淳子 訳 早川書房
2008年 1890円
行動経済学という言葉をこの本で初めて知りました。読んでみて通常の経済学とはひと味もふた味も違う行動経済学の面白さにはまってしまった。著者は人間の行動を数々の実験を通して分析した。その結果に思わず何度も独り言で「なるほど」とか「私もそうする」なんてつっこみを入れてしまったほど。特に印象深かったのは無料の威力について書かれた箇所で「無料」に弱いのは万国共通だったと再認識。
虚像(メディア)の砦真山 仁著 講談社文庫
2007年 本体781円
元新聞記者だけあって、骨太の筆致で巨大メディアの裏側をいきいきと描いて読ませる。イラク人質事件など実在の事件がうまく織り込まれ、メディアが実際に抱えるであろう様々な問題を浮かび上がらせる。同時に、それらが我々視聴者とも無縁ではないことも。熾烈な企業買収の世界を描いて話題になった「ハゲタカ」も一度読んでみようかという気になった。
万城目学 著 文藝春秋社
2009年 ¥1650
人気作家である。奇想天外な設定とストーリー展開、であるのにまことしやか。人気の秘訣か。現代の大阪が舞台で、大阪城には豊臣の時代から今なお受け継がれる秘密が隠されている。といえばあっさりとしたもんですが、その秘密が、ありえへん〜って。これ以上書くとネタばれしちゃう。あえて言及するならば、私も大阪の女、その壮大な秘密に組み込まれた一人なんでっしゃろか。

エリザベス・キューブラー・ロス著 上野圭一訳 角川文庫
本体781円 2003年
「死ぬ瞬間」を記した著者の自伝。人の一生は何が待ち受けているか分からない。目の前に起こる出来事を一つ一つ夢中で乗り越えていくうちに、一見バラバラに思えた出来事がいつかつながる時が来るのかもしれない。彼女は「死」の探究に少なからぬ足跡を残したが、医師であるが故に味わった苦しみも大きかったのではないかと思う。2004年に亡くなったそうだが、今は至福の中にあるのだろうか。
異国の迷路坂東眞砂子著 新潮文庫
2009年 本体362円
世界の様々な都市を舞台にした、不思議でゾワッとくる13編のショートホラー。「死国」でブレイクする前のまだフリーライターをしていたころに「るるぶ」に連載していた作品をまとめたものだが、もうすでに坂東ワールドが展開されている。私はむしろ「死国」以降の力作よりも、これくらいの軽い不思議の話が好きかな。夏におすすめ。

三島由紀夫レター教室三島 由紀夫 著 ちくま文庫
1991年 本体520円
20代から40代の男女が互いに送る手紙だけという珍しい構成の「小説」。三島由紀夫がこんなに笑いのセンスがあるとは知らなかった。辛口の相手批判や肉体的な愛の申し込み、心中のお誘い、借金の申し込みなど、すべてが機知に富んだ名文で、「この表現いただき!」と思えるものだらけ。まだ年半ばですが、今年のナンバーワンお薦め本に決定!
見えないアジアを歩く見えないアジアを歩く編集委員会 編著
2008年 1700円
国境とタブーを越える「紛争地」旅ガイドと本の帯に書かれている。まさにその通りの内容でカレン(ビルマ)・スリランカ・アチェ(インドネシア)・ナガランド(インド)・チェチェン・チッタゴン(バングラディシュ)・イラクの旅ガイドになっている。通常なら外務省の危険情報を見てしり込みしてしまうような場所ばかり。読みながら、用意は周到に行動はしなやかかつ大胆にという著者たちの行動様式に強く惹かれるものがあった。書かれている場所は「危険で人の行かない場所」で読み手の側からは「見えないアジア」である。数々の戦争・紛争も「その場所」に立って見るとまた違った側面が見えるはずだと実感した。