三浦しおん 著 双葉社
2007年 1500円
文楽!人形浄瑠璃の世界が舞台なの。先日文楽教室を鑑賞してきたもんで、かなり興味があった世界を、好きな作家が小説化していたというのであわてて読みました。浄瑠璃は人形遣い・義太夫語り・囃し手と目に見えるだけでもたくさんの人で作り上げている。人間関係にドラマがないはずがない!実際、参加した文楽教室で解説をして下さった面々も、ある意味魅力的で個性豊かなメンズぞろいだったわ。三浦さんもきっとその辺に目を付けたんでしょうな。

畑谷 史代 著 岩波ジュニア新書
2009年 740円(本体)
第二次大戦後、60万人の日本人がソ連の強制収容所に送られた。乏しい食事と過酷な労働のため死者は6万人にも及んだという。石原は強制労働25年の刑を言い渡され、結局帰国まで7年にも及ぶ労働に耐えた。ようやく帰った祖国は、「シベリア帰り」を暖かくは迎えなかった…。そのドロドロした思いを表現した詩は、一度読んだら心に突き刺さる。このまま「シベリア抑留」という事実をを私たちは忘れ去ってしまってよいのだろうか。

ガール奥田 英朗 著 講談社文庫
2009年 本体552円
働く30代女性を主人公にして描く5つのストーリー。管理職になって男性から嫌がらせを受けたり、マンションを買う決心をしたり、新人イケメンに恋しちゃったり、全部「これわかるー!」って感じで、共感しちゃいます。20代後輩を見て、いつまでも「ガール」ではいられないと諦観しかけるけれど、それでも「生涯一ガール」でいようと決心するあたり、かなりいい。世間が女性に厳しい目を向けてくる中で、悩みながら人生を自分で選び取っていく姿勢が貫かれていて気持ちいい。この著者、男性なのに、なんでここまで描けるのかしら。
劒岳<点の記>新田 次郎 著 文春文庫
2006年 本体686円
測量官柴崎芳太郎による劒岳「初登頂」を題材にした小説。時は明治末期。山岳地帯の測量がいかに大変だったかがよく分かる。一旦山に入ると、ひたすら歩き登り下りる生活。著者自らも登山者だったらしいが、道なき道を歩み、時に悪天候に進路を阻まれる登場人物たちの目線や思いの描写が見事。饒舌ではないが、胸に残る小説だ。
佐野 洋子 著 新潮社
2008年 1400円
絵本作家の佐野洋子さんの子ども時代から現在に至るまでの半生と、その母親の人生を濃密に振り返った本。「波」に連載中に飛ばし読みをしたとき、認知症になったシズコさんに語りかける佐野さんは、母に母性を感じることがなかったと恨み節を書きつづっているのだととらえていたのだが、単行本を読み直した今、母を書くことで自分自身を見つめなおす作業をしたのだと感じた。親子関係家族関係振り返れば自分が見えてきてトホホ。

小川 洋子 著 角川書店
1995年 1200円(本体)
アンネの日記は、確か中学生の頃に読んだきり。その頃は、さしたる感想を持たなかったような気がする。15歳で亡くなったアンネと同世代だった私は、彼女よりずっと子どもだったのだろう。小川洋子さんの眼を通してみるアンネは、深い洞察力と素晴らしい表現力を持っている。隠れ家生活の中でもオシャレを楽しみ、ユーモアを忘れず、すでに大人への階段を上っている。今「アンネの日記」を読んだら、彼女と友達になれるのかもしれない。もう一度読んでみよう、と思った。今度は完全版を。

二度目の破滅ロバート・B・パーカー 著 早川文庫
2001年 本体760円
パーカーが女性私立探偵を主人公にしたシリーズ第2作目。もと警察官のサニー・ランドルが、すごくかっこいい!探偵として有能なだけでなく、私生活の魅力的な様子が生き生きと描かれている。離婚したパートナーとの関係や、ゲイの友人などとの人間関係を見ても、自立しているが頼れるところは遠慮なく、というところがいい。警察を辞めた理由を問われて、「人のために働くのは性にあってなかったんです」との返答がクール!
ミーナの行進小川洋子著 中公文庫
2009年 本体686円
ミュンヘンオリンピックの年に、芦屋の洋館で過ごした2人の少女と家族の物語。もし他の作家が同じ題材で書いても、こうはならないだろう。ドロドロした出来事も、病も心の痛みも、小川洋子さん独特の静かな世界の一場面に違和感なく埋め込まれる。良質の大人のための童話を読んで、心が満たされる気がする。