山口晃 著 羽鳥書店
2009年 2625円
コマ割りで描かれていて、ひとことで言えばマンガなんだけど、ゆるーい思索がベースに流れていてたまらんのです。芸術家のはずなんだけど、凡人的な感性も持ち合わせているのが心をくすぐるのね。画家の日常や取材日誌と妄想がまさにつれづれなるままにって感じですわ。月刊誌の連載がまとめられているのでボリューム満点!お腹いっぱい大満足。
中島 岳志著 毎日新聞社
2009年 1800円
アジア対談という書名に惹かれて手にとって読み始めた。対談集でテーマは様々、対談日時も2006年から2009年までの3年間。3年という年月の間にはリーマンショックに端を発する世界同時不況もあり日本は激震の只中に放り込まれ未だ出口が見えない状況にある。そんな閉塞した今の日本をどう考えたらいいのか或いは世界の中でどんな位置にいるのか、また今を切り取って考えるのでなく歴史を知ることの必要性等々が対談の中で語られている。私にとって少々難解な部分があったが日本のことを考えるうえで日頃のネットニュースやテレビ等の報道だけで判断する怖さを思い知らされた。

田辺 聖子 著 角川文庫
2006年 476円(本体)
ユーモアあふれる御主人のカモカのおっちゃんが、病に倒れ亡くなるまでの1年足らずの田辺さんの日記。高齢の母親の面倒、山のような仕事、傍からみたら戦争のような毎日を粛々とこなしていく。慌てるわけでも嘆くわけでもなく「人生はいろいろあります」というように。そんな田辺さんへのカモカのおっちゃんからの最後の言葉は「かわいそに。ワシはあんたの。味方やで」であった。

熱さはなく爽やかなマラソン小説。ひょんなきっかけで走り始める主人公はいかにもフィクションだが、それがいかにも森絵都ワールドで、小説だからと割り切って世界に浸れる。なさそうでありそうなシチュエーションで走り始めたバラバラな世代の人々が、いつしかチームとして新たなコミュニティを形成するのも結構ハートウォーミング。個人で走るマラソンを巧く使って、甘ったるくならなかったのが読ませるコツなの?絵都様。

手塚 治虫 著 小学館
2000年 838円(本体)
時は幕末、幕臣の伊武谷万二郎と蘭医者「手塚良仙」に焦点を当て、動乱の時代を描いた作品。「鎖国か開国か」それまで誰も直面したことない問題に対応しなければならい幕府の苦悩がよくわかる。この時代、武士や庶民もまた未曾有の事態にどうするか、生きる力を試されたことだろう。作品名の「陽だまりの樹」とは末期の幕府のこと。陽あたりのよいところですくすくと育ち立派にみえるが実は中は空洞ということらしい。ちなみに手塚良仙は手塚治虫の祖先で実在した人物である。

星野道夫 著 小学館
2004年 840円
各章アラスカで生きる人々をテーマに、自然・民俗・生き方が個性豊かに描かれている。星野さんの他の作品に書かれた人達が続々登場でなんだか旧知の友人に再会したみたいな。淋しいのはこれが星野さん亡き後に編集されていること。この世は無常で変化を続ける、そして連綿と受け継がれていく、生きとし生けるもののサイクルが心にしみわたる。その中で自分はポリシーを持って生きているか問い直した。

ウイグルの母 ラビア・カーディル自伝」−中国に一番憎まれている女性ー
ラビア・カーディル著 アレクサンドラ・カヴェーリウス著 熊河 浩訳
講談社 2009年 2400円
ラビア・カーディルという名前を初めて知ったのは昨年の「ウイグル暴動」の時でした。私はウイグル問題についてはほとんど知識を持たない状態で、世界ウイグル会議議長という立場で来日した映像を見ながらどんな人物だろうという思いを持ち続けていた。読み進みながら作者の人生のあまりの波乱万丈に圧倒される。書名に出てくる「中国に一番憎まれている女性」という表現が生まれるまでの作者の人生。この自伝には作者の自分で何事も切り開いていく強さと民族が尊重される社会を手に入れたいという熱望が込められている。人間が尊重される社会を手に入れるということは世界中共通したテーマであり、私たちにも大切なことだと思う。

谷川俊太郎質問箱谷川俊太郎 著 東京糸井重里事務所
2007年 1500円
ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されていた、谷川俊太郎へのQ&Aが本になったもの。俗世の悩みから宇宙的疑問に至るまで、谷川流ユーモアで軽妙かつ丁寧に返答されていく。「心の中の鬼はどうやって退治しますか」という問いに、「退治するという発想はやめて、とりあえずハグする」という返事って、生々しくかつ暖かくて感動。詩人って、というより谷川さんって本当に素敵な方だなって再認識しました。