第3回

梨木 香歩 著
理論社ライブラリー 1997年 1400円
なんてきれいな装丁なのだろう。表紙を見ているだけで何かが癒されていくような気がする。そして、読み進めていくと忘れてた子どもの頃のこと、夢中になった本や遊び、近所のお寺の池・・・、いろいろと頭に浮かんだ。「ファンタジー大賞」を受賞したこの作品は、巧みに読み手を自分自身の「裏庭」へと誘う。そこで癒され勇気づけられ、そして主人公の照美のように「人は生まれてからずっと一人だ」という事実にすがすがしい喜びを見いだすかも知れない。

大江 健三郎 著
講談社文芸文庫 1995年 本体951円
父母が外国へ行って不在中の、脳に障害のある長男のイーヨーと、その妹弟との日常を記した物語。 大江氏の本を読むといつも、静かな気持ちになる。そして、人生を真摯に生きるということを考えさせられる。この本も、例外ではない。少し前になるが、この本は、伊丹十三監督によって映画化され、既にビデオにもなっているので、観てみるのもいい。

ロアルド・ダール 著 田村 隆一 訳
評論社 1972年(初版)
今回紹介する本は実は20年以上も前から何度も何度も読み返しているとっておきの一冊です。ストーリーはとても貧しくて毎日の食事も満足に食べられない一人の少年が学校の帰り道で偶然に拾った一枚のお札から とてつもない幸運を手にいれるというサクセスストーリーです。実にありふれたストーリー
展開なのですが それでもこの本がおもしろいのは何といっても登場人物のキャラクターです。現実にもいそうな子供たちやその家族にファンタジーの世界に生きている不思議で魅力的なキャラクターを織り混ぜて実にワクワクハラハラするストーリー展開で一気に面白い場面を次から次へと見せてくれます。中でも随所に登場する発明品が実におもしろくて つい挿し絵に見入ったり視覚的にも面白い作品です。ダールの作品は他にもたくさんありますがその中には映画でおなじみの「ジャイアントピーチ」があります 日本では「おばけ桃の冒険」という邦題で評論社から出版されています。是非こちらも合わせて読んでみて下さい。

岳人(クライマーれつでん)列伝村上もとか 作
文芸春秋 1996年 本体544円
第6回講談社漫画賞受賞作。美しい表紙と凄そうな内容に惹かれてつい買ってしまったのがこの本。短編8話で構成。岳人たちの山登りへの異常とも思える情熱。読んでいてとにかく怖い。山を愛する私だけど、命を捨てるほど山の魔力に取り憑かれたくはないな。人間って簡単に死ぬのね。でも、なぜ人は山に登るのかという疑問は少しは解けた。

新保 満 著
明石書店 1993年 本体2500円
カナダ北西準州先住民の歴史と現在を聞き取り調査した一冊。実際の先住民の生い立ちや、ともすると難解で退屈になりがちな問題が理解しやすくまとめられている。物語の中でしか知らなかった極北であったが、この本はそれ以上に興味深く、考えさせられる。伝統的な生き方は守り続けるには厳しすぎるが、亜北極圏に限られたことではない。

沢木 耕太郎 著
新潮文庫 1989年 本体427円
ニュージャーナリズムの旗手と言われる著者のエッセイ15編。中でも”わからない”という1編がお薦め。宮沢賢治の有名な詩”雨ニモマケズ 風ニモマケズ・・・”。その後のフレーズを空で全て言える人はそう多くはないだろう。著者は、ある時、井上陽水から続きのフレーズを電話で聞かれる。賢治の詩をもとに陽水の曲の一つができたという。”雨ニモマケズ”はスゴイ詩だ。陽水もスゴイ。つい、読み返してしまうエッセイ集である。

冬のデナリ西岡 四郎 著
福音館書店 1996年 本体1700円
30年前に冬のデナリ(マッキンリー)に世界で初めて挑んだ屈強な8人の男たちの記録。小説仕立てなのでどんどん読める。山登りに対する各国人の考え方の違いも興味深い。30年を経てやっと文章化できたということからもこの冒険がいかに壮絶だったかわかるでしょう。何度も泣ける。私もデナリに行ってみよう。だけど山登りは遠慮する。

フォレスト・カーター 著
1991年 1854円
久しぶりに読み返したが、また泣いてしまった。リトル・トリー(小さな木)と名付けられた少年が祖父母とのわずか5年の生活の中で先祖からの大切な゛おきて″を学んでいく話で、著者の幼年時代がベースとなっている。自然と共に生きているチェロキー族の生活はシンプルですてきだ。「人は生まれて生きて死ぬ」ということが自然に理解でき、本当に大切なのは何か思い起こさせてくれる。感動したいときにおすすめ。