第5回

「不思議な文通」〜グリフィンとサビーニック・バントック 絵・文 小梨 直 訳
河出書房新社 1992年 本体2427円
なんだか不思議な本。ロンドンの画家グリフィンの元に、ある日一枚の絵葉書が届けられた。差出人の女性は、グリフィン本人しか知り得ない事実を知っていた。この女性は誰なのか、という疑問はさておき・・。文通している二人の手製の美しい絵葉書や封筒がその形のまま本になっているので、葉書は表裏を繰り返し眺め、封筒は便箋を広げて読んでいくという楽しみがある。その時々の文通者の心情が絵に表れているので、そのトーンの変遷も興味深く、とにかくGOOD.

小出康太郎 著
校成出版社 1989年 本体1262円
ダイビング中に流されて 二昼夜漂流したダイバーのドキュメント。あの広い海原に頭一つ海面からだしてたった一人とり残されたら、改めて海の大きさを恐ろしいと感じた。それでも少しだけ、夜光虫で光る夜の海や、挫けそうな心を励ましてくれるイルカを見てみたいなんて思ってしまった。不謹慎かしら、やっぱし。

長倉洋海 著
福音館書店 1996年 本体2600円
アマゾン先住民の飾らない笑顔に心なごむ写真集。人間って余計なものをもたずにシンプルに生きていればこんなに素敵な笑顔でいられるんだ。日々眉間に皺をよせている自分を反省。人間が好きなんて今の毎日のなかで言える日がくるのかなぁ、少し自信がないわ。

野町 和嘉著
集英社 1994年 本体5631円
この写真集を初めて目にした時、自分が今生きている同じ地球上の同じ空間にこんなにも過酷ながらも美しい自然が存在し、厳しい状況の中でも信仰心の厚い人々が生きている事に ただただ感動してしまいました。1949〜50年に中国人民解放軍によって侵略され、その後も中国からの独立運動を繰り返しながら、自らの文化・宗教を守り続けるチベットの人々の姿に触れてみて下さい。きっとチベットという国を知るためには絶好の写真集だと思います。

野町 和嘉著
新潮社 1997年 本体1553円
ナイル川って聞くと まずエジプト文明・クレオパトラ・ギザのピラミッド・砂漠等が頭に浮かんできます。でもこの本には、それ以外にもエチオピア・スーダンといった余り私達にはなじみの少ないナイル川流域の国の人々の生活様式や歴史が写真によって語られています。ナイル川という1本の川によって古代エジプト文明は繁栄しました。近代ではエチオピアの飢餓、スーダンの民俗闘争など様々なアフリカ世界の悲劇がありながらもナイル流域には、それぞれの民俗が固有の文化を持ちながら生き続けているのです。

高橋克彦・杉浦日向子 著
PHP文庫 1994年 本体447円
たった百年前のことなのに、江戸時代の記憶は現代日本人からすっかりと消え失せてしまったのか。幕末に来た外国人をして「こんなにのんきな人々は見たことがない」と言わしめた日本人よ、いずこへ。1日4時間、月7日働けば家族4人食べられた。だから一生懸命働いたら家はすぐに手には入ったけど、それより酒飲んで遊んでいることに幸せを感じてたみたい。日本人は明治維新を境にメンタリティまで全部変わちゃったのかな。いったいどっちが幸せやら・・・。

杉浦日向子 著
新潮社 1988年 本体951円
1話が7〜8ページ。百物語といっても奇をてらったり恐がらせようとしたりというところが全然ない。ただ事実(?)がたんたんと描かれているだけだ。読み終わると不思議な、それでいてなんだかとてもなつかしいような気持ちになる。私たちの奥底のDNAに刻まれた記憶が呼び戻されるとでも言うのだろうか。著者は前世は今の後楽園あたりの春日町に住んでいて、お墓は新宿にあると思うと書いているので本当に著者の記憶にあることなのかもしれない。

Katharine Hepburn 著 芝山 幹郎 訳
文藝春秋 1993年 本体4660円
強い信念と意思を持った女性。自らを偽ることなく、時には他人と言い争う。自分に落胆もし、しかし自分を幸運な人間だと言い、心から人を愛するということはこうだと言える女性、そんな一女性の自伝である。彼女が約30年を共にするスペンサー・トレイシーと出会った時、彼には既に妻子があり、それは彼が死ぬ時も同じだった。30代初期から、「ボックスオフィス・ポイズン=興行の足をひっぱる女優」のレッテルがつきまとうが、『黄昏』に出演しアカデミー主演女優賞を受賞した時は74歳だった。文章は決して読みやすいとは言えないが、こんな風に人間くさく(?)生きてみたいと思わせる本である。