第10回

アミスタッド

アレックス・ベイト著 雨沢 泰訳
新潮文庫 522円 1998年 

この春公開されるスピルバーグ映画脚本の小説化。19世紀に実際にあった奴隷売買に関する訴訟がテーマ。奴隷船でのアフリカ人たちの反乱、それが拿捕された後の奴隷の所有権争いというテーマ自体はドラマチックだが、どうにも迫力が感じられないのは、やはり映画のノベライズであるためか。映画の原案『黒い反乱』(ウイリィアム・o・オーウェン著、1953年)を読んでみたい。

 

アジア・モンスーン

市原基著
朝日新聞社 3900円 1993年
           

 著者はこの著作の中で、12年計画で「アジア・モンスーン」を追うことにしたと記している。自然は、人間がいかに英知を結集しても制することのできない絶対的なものである。その、自然と共に生活する人間の姿が水という、形のないものを通して描かれている。
 アジア・モンスーン地域の人々の姿、雨期と乾期で全く別世界に姿を変えるアジアの自然、写真の一枚一枚が実に見事に、それぞれの瞬間をとらえている。日本はアジアの一員であると言いながらも、常に欧米にしか目を向けていなかった。これからは、アジアの自然をいかに、守っていくかということを考えてゆくことも大切であろう。       

                                             

九龍塘の恋

ポール・セロー著 中野 恵津子訳
文芸春秋 2381円 1997年
         

 1997年という年は、世界中が香港返還に注目した年であった。しかし、今では香港は、ニュースにも、ほとんど登場しなくなり、唯一話題になったのは、新型インフルエンザくらいです。 
 この本は、香港返還をひとりの在住イギリス人の目を通して描いた小説です。香港に生まれ育ち生活するイギリス人の返還までの心理的プロセスがサスペンス仕立てのストーリーの中で、実にうまく描かれている。改めて、香港返還をイギリス人の立場から考えてみる機会を得た一冊です。

   

渚と澪と舵 -わが愛の航海記

桐島 洋子著
文春文庫 486円 1997年

名作といううわさの桐島洋子の処女作を読んでみたいとずっと思っていた。この本がまた、復刊されてうれしかった。
30年も前に倍も年上の人との間に3人のいわゆる私生児をつくり、職を失い、男はあてにならず、私なら不安でたまらない状況で新天地を求めてアメリカに渡る。お金もあてもないアメリカでのその日ぐらしをかえってすがすがしいと感じる著者。ちょうど今のわたしと同じくらいの歳の著者に限りない友情を感じる。それにしてもなんとすばらしい文章力よ!!

 

どくとるアイアイと謎の島マダガスカル 上・下

島 泰三 著
八月書館 2000円 1997年

この著者はただの学者先生ではない。確かにサルの専門家で、博物館の館長なんだけど。自然体で、文章から感じる人間としての余裕みたいなものがなかなかに素敵なおじさまである。そしてこの本は、アイアイというさるを追いけたマダガスカルでの日々と、多種にわたるおサルさんについて書かれている。サルについての著述も興味深いけど、マダカスカルでの日々がとても楽しめる

 

萌の朱雀

河瀬 直美 著
幻冬社 1997年 1300円

ご存じ、ベネツィア映画祭新人監督賞受賞作原作。なんだか少女マンガを読むような、お尻がこそばくにるような文章表現。映像として表現できても文章は、ねぇ。ってかんじ。ただし、顔見知りの爺さん88才は、「こういう表現はね、なんや ふぁーつとした、なんともいえん、ねぇ、こういうのんは、私らには書こう思っても書けません。まぁ才能ですな。へぇへぇ読んでみなはれ」と、絶賛?してお薦めくださいました。

このページのトップに戻る   フロントへ