第14回
ノーザンライツご存じ、熊の写真家、星野さんの絶筆となった作品。アラスカの大地とそこに暮す人々をこよなく愛した彼の思いがぎっしりつまっている。静かな文章で、友人への思いや、アラスカが抱えている問題を熱く描いている。最終章をかき終えることなく急逝した彼に変わって、友人のシリアが最後をまとめているのも印象深い。

少し前のトム・ハンクス主演の映画は宇宙飛行士が主役だったが、この本は、彼らを支えていた管制官たちを中心に描かれたものだ。絶望的な状況に放り出された3人の宇宙飛行士を、いかに生還させるか。それを成し遂げるために発揮された、驚くべき組織力、技術力!スタッフの殆どが、20代、30代であり、現場の最高責任者ともいえる立場の人間も、そのとき36歳だったということに、アメリカという国の底力を感じる。読みながら、日本なら無理だな、と何度思ったことか・・。

本屋でたまたま開いたページに、「たたんだ傘の真ん中あたりを握り、先の部分を後ろにして地面に平行に持って歩く人。これには腹が立つ。」という記述を発見し、思わず買ってしまった本である。その続きは読んでのお楽しみということで、三谷氏独特のユーモアが性に合う方には癖になるエッセイ集だ。私のお気に入りの映画「12人の優しい日本人」の元となる芝居も、どうやら三谷氏作らしい。いろいろ逸話がありそうな人だが、やっぱり笑いにセンスがある!

「火宅の人」で印象深い、檀一雄。その妻に、一年余にわたるインタビューを重ね、紡ぎ出されたのがこの本である。「火宅の人」の出来事では、実際の「事」に傷つき、書かれたことで傷いた、という。それでも彼女は、やり直すことができたとしたら、また檀一雄の「妻」になりたいという。何なのだろうか、檀一雄亡き後も、彼女はずっと、自分である前に女なのだ。そのことに何故か、真似のできない強さを感じた。

カヌーで川を下って旅したり(何日も風呂に入らずに)、ホームステイしたりと、生のアラスカが見えてくる本。野性の狼と出くわすなんて、手付かずの自然の真っ只中にいる著者が羨ましすぎる。自分だったら、恐くてみじろぎひとつできなかっただろうな。ということで、ちょっくらオーロラ観察に出掛けてきまっさ。行くしかないでしょ。やっぱし。

登りたくなるわよ、この本読むと。で、金剛山周辺のトレッキングコースを探険したくなりました。身近かな山でありながら、こんなにたくさんのコースがあって、山登りの充実感を味わえるなんて。そんなことを教えてくれた一冊。金剛山の四季の移ろいを豊かに描いてあり、また日常のすぐ隣にある自然を思い出させてくれます。

筋肉少女隊の大槻ケンヂがインドとタイへ旅した旅行記。普通の旅で、彼自身普通の人で、何だか拍子抜けするかも。でも、いい意味での拍子抜けなんだなこれが。もっと得体のしれん男だと思っていたけど、いい奴なんだよ大槻ケンヂってやつぁ。芸能人ぽくないし、そこはかとなく漂う知性もなかなか。すっかりファンになっちゃったわ。

自分の死亡記事を書く第1章「死亡記事にあの人の生きざまを読む」では、有名故人の死生観(人生観)と死に様の対比が死亡記事の引用によって次々と提示され、圧倒される。寺山修司と草野心平は特にすごい。岡本太郎もいい。生き様のかっこいい人は死に様も決まってる!

世界古本探しの旅7人の著者が世界の大都市の古書店を訪ね歩く。こんな旅も上級者編としていいかも。登場する古書店は、どれも書斎風の作りで重厚な雰囲気。また、古書の挿絵は繊細で美しく、装丁もそのまま芸術作品の気品に満ちていてすばらしい。19世紀には、本がこんなに丁寧に作られていたのかと感動する。

浪華の翔風 天保期の大坂を舞台にした時代小説。主人公は暗い過去を背負った影役の女・あや。あやは次々に起きる薬種問屋の主人失踪の謎を追いながら陰謀の渦に巻き込まれて行く。ドラマティックな展開で読み出したらやめられない。すごい新人が出てきたもんだ。(実は友人のデビュー作なのです。でも、おもしろいんですよ、ほんとに。)

メコン河は全長4200キロメートル、流域面積795000平方キロメートル。中華人民共和国・ミャンマー連邦・タイ王国・ラオス人民民主共和国・カンボジア王国・ベトナム社会主義共和国と実に、6ヵ国にまたがって流れている国際的大河である。
この写真集では、標高5000メートルを超える源流ちかくの実に厳しい自然環境に暮らすチベット民族の姿から、標高0メートルの河口の肥沃でゆったりとしたメコンデルタまで、様々に姿を変えながら流れるメコン河をトータルして見ることができる。
様々に様変わりする自然環境の中で、多くの民族が自分たちの生活をいとなんでいる姿も印象的である。この雄大で豊かなメコンの流れがこれからも、変わることなく存在し続けること願いながらこの写真集のヘージを閉じました。

チベットへ一度トライしてみたいと思っている人。チベットってどんなところか興味をもっている人。そんな人には、是非読んでほしい一冊です。
もちろんガイドブックとしても情報量も多く、チベットに行くための様々なルートが記載されている優れたものですが、それに加えてチベットの自然、歴史なども載せられていて読み物としてもチベットを知るための一冊として優れていると思います。
中国とチベットの政治的な対立のため、旅するためには新しい情報を手に入れることが何より大切ですが、この一冊でかなり政治的対立の背景や今の情勢も理解できると思います。

1998年3月に亡くなった著者がいま静かなブームを呼んでいるそうだ。「玄人ごのみの文章力」とか「デビューした時から完成された作家だった」といわれている文章の美しさと卓越した構成力。パリやミラノで過ごした日々、日本の家族のことを描いたエッセイなのに、映画をみているように物語はすすんでいく。何度読み直してもその美しい文章に酔いしれていく。わずか8年間の作家生活だったというのは残念だ。

私は代官山が好きだった。オシャレな町並みに同潤会代官山アパートがあったから。ここへ行くとなんだか外国をさまよっているような気がした。深い緑につつまれ、アパートには蔦がからまり、戸ひとつにも神経がいきとどいた建物。町には食堂と靴直しと風呂屋があった。こんな東京のステキな記憶がまた消えていった。これは1996年に壊された代官山アパートの写真集なのです。(でもこの写真集はあまりにもモデル風の人物が多いように思う。もう少し建物に焦点をあてた写真も欲しかった。)