第17回

海からの贈物リンドバーグ夫人著 吉田健一訳
新潮文庫 1967年 400円
知的階級に属するアメリカ人女性の人生に対する洞察。40年も前に書かれたものなのに、全く違和感がない。多忙な日々の中で孤独な時間をもつことが、内的世界を充実させるためにいかに重要か、というようなことが淡々とした文章で語られている。お手軽な本が氾濫している昨今、じっくり物事を考えたい人にはお勧め。

松葉一清著 朝日文庫
1998年 本体760円
ミッテランが1981年に宣言した「グラン・プロジェ」、政府のパリ大改造計画。ルーブル美術館のガラスのピラミッド建設を巡る論争は有名な話だが、数々の論争はさておき、それは結果的には、世界のどこにもない都市を造り上げたと思う。読みながら、これは既存の価値観やその他諸々のものへの「パリの挑戦」だと思った。建築物の写真も豊富なので、パリを別の視点から訪ねるガイドブックとしてもお勧めの本である。

マリア・ブラッキン著 新潮文庫
1998年 本体438円
作家森瑤子さんが52歳で急逝されてはや数年。森さんの本をそんなにたくさん読んだわけじゃないけれど、森さんが書く物語の影響か、私生活も「おしゃれな」生き方をされているというイメージがあった。でも、娘のマリアさんの筆で浮かび上がるのは、仕事に追われる毎日、夫との口論、時折見せる寂しい表情等々、森瑤子とは全く別の、伊藤雅代(マサヨ・ブラッキン)という一女性の姿だ。なんだかせつなくなった。

宮部みゆき 双葉社
1992年 1600円
とうとう宮部みゆきが「理由」で直木賞を受賞した。多作な作家で力作ぞろいなのに、「今さらなぜ」という気がする。「火車」(かしゃ)でもよかったのに・・・。
この本はカードローン地獄がテーマだ。一度はまったら自分では抜けられない地獄。そして誰でもふとしたきっかけで地獄行きの「火車」にのってしまう。リアリティのある恐怖がこの本にはある。(ちなみに「理由」は、構成がもう一つだと思いました。)

イレイン・セントジャームズ著 田辺希久子訳
The Japan Times 1400円
「人生を複雑にしない」これこそ、わたしのめざす道。でも今はそれとはかけ離れた生活なので参考に買ってみた。100のうち40くらいは役にたち、30くらいは実践していることで、のこりは参考にならなかった。アメリカ人の書いたものなので日本の現実とはあわないアドバイスも多い。たとえば「炭酸飲料より水を飲む」。さらに著者はお茶やコーヒもやめて文字通り「水しか飲まない生活」のようだ。いくらシンプルな生活がよくてもちょっとね。

黒川博信著 集英社
1998年 1600円
著者が27才の時、会社を辞めてとびこんだインド。一年間の旅の間、様々なアクシデントにみまわれたりホームシツクともたたかいながら、日本では味わえない様々な体験を積んでゆく一人の若者。実に自然体で、たくましく、粘り強く、ユーモアも持ち続けた著者。インドの人々の生活、習慣、宗教、人生観も伝わつてきて読み応えもあり、旅の楽しさが実感できる一冊です。

町田仁志+まついなつき 著 情報センタ−出版局
1997年 1200円
英会話をいかにしてものにしたか、いかにしてものにしていないか。著者夫妻が自らの青春を赤裸々に語った体験談。英会話は、魂と書いてソウルと読むのよ。

蔵前仁一 著 講談社
1998年 1600円
少し昔の話を掘り起こして短編集になっている。著者には悪いがはっきり言って若いときの話の方が面白い。最近ちょっと後ろ向きなかんじがしてただけに、今回はグッドですう。特に表題にもなっている「旅人たちのピーコート」は、ええはなしやで。

岡村ゆかり 著 晶文社
1998年 1998年
著者のあと書きに書かれた一文が私の心に残っています。「街のどこだって普通においしいものが食べられる。」これがそのままあてはまる国がベトナムです。今の日本は残念ながらどこでも食べ物が手に入りますが普通のものをおいしく食べることはなかなか難しいことです。経済的には貧しくとも本当に豊かな食の国だという事を再確認しました。そして、食べ物にまつわるエピソードから人々の生活ぶりや考え方も伝わって来て楽しい本になっています。日本にいながらにしてベトナム料理を楽しめる様にレシピも紹介されています。